カテゴリー「5.【イベント観覧】」の記事

2016.02.14

ヒロイン沢井桂子さんの撮影秘話トークを堪能!円谷英二実質最後のゴジラは宇宙侵略SF+怪獣対戦映画の意欲作!・・・『怪獣大戦争』(東宝、1965年)@シネマノヴェチェント

 西横浜/戸部のシネマノヴェチェントで『怪獣大戦争』を鑑賞しました。この映画は私が初めて劇場で観たゴジラ映画で、とても思い入れがあります。本当はキングギドラがデビューした前年の『三大怪獣地球最大の決戦』を観に連れて行ってもらいたかったのですが、親の都合でダメだったので、『怪獣大戦争』で初めて動いているキングギドラを観ることができ、とても興奮したことを覚えています。

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 『怪獣大戦争』は怪獣映画ではありますが、ベースとなるストーリーは『地球防衛軍』や『宇宙大戦争』と同様、宇宙人による地球侵略SF映画です。そのため、『怪獣大戦争』は前作を受けた形で、キングギドラ、ゴジラ、ラドンが引き続き登場しますが、本筋にはあまり絡まず出番は極端に少なくなっています。

 キングギドラは前作では金星を滅ぼして次に地球を狙ってやってくる自立的な宇宙超怪獣でしたが、今作では『地球防衛軍』のモゲラのように宇宙人の侵略の尖兵にしか過ぎません。中野監督によればSF映画が当たらない日本で、どうSFを見せるかを考えて作られたとのことです。宇宙人にゴジラを絡ませても破綻せず、観客が納得できる完成度の高い映画になっているのは、やはり脚本の関沢新一さんのお手柄なのだろうと思います。

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 この作品は何と言っても地球侵略を狙うX星人のユニークさが売り物です。X星人は最初から領土と女性の要求を突きつけてきたミステリアンよりも相当陰湿な宇宙人で、キングギドラ撃退のためにゴジラとラドンを借してくれ、その代わりに癌の特効薬処方を教えるから、と当初は表面上Win-Winの関係を築こうとするように見せかけます。当然、その裏では地球を乗っ取る陰謀を着々と進めています。

 『宇宙大戦争』の敵ナタール人は直接の意思疎通が出来る相手ではありませんでしたが、『怪獣大戦争』のX星人は『地球防衛軍』のミステリアンのように一見コミュニケーションが取れる相手のように思えます。そのため宥和か抗戦か、地球人としては大いに悩むところです。但し、X星人は自動計算機を盲目的に信奉しておりコンピューターが出した指示の通りに動きますから、X星人と真のコミュニケーションを取ることは地球人にとってはかなり難しいものと思えます。

 『地球防衛軍』ではミステリアンの統領を演じた土屋嘉男さんが再登場し、X星人のトップである「統制官」を楽しそうに演じています。地球基地指令を演じた田武謙三さんも印象に残ります。初登場シーンではなんと日焼サロンのように光線を浴びています。背中にはお灸のようなものも着いています。これはX星人の体が弱っていることを観客に見せているのでしょうか?それともX星人の素顔では青白すぎて地球人に化けられないないから変装用なのでしょうか?

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 X星人のユニフォームも初公開当時としては相当ぶっ飛んだもので、子供心に強烈に刷り込まれてしまい、ずっと忘れることができませんでした。そのため『ゴジラ FINAL WARS』のX星人には大いに失望したものです。

 上映後にはこの映画のヒロインである沢井桂子さんと、特撮のチーフ助監督だった中野昭慶監督によるトークショーとサイン会・撮影会が行われました。

 沢井さんは物心ついたころから女優になると決めていたそうです。第4期オール東宝ニュータレントの一員として1964年にデビューされていますが、オール東宝ニュータレントは映画のスター候補であるニューフェイスと違って、映画のみならず舞台にもテレビにも活躍する役者さんとして幅広く期待される若手という位置づけだったのだそうです。

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 沢井さんの芸名の桂子は撮影所の重役が大先輩の小林桂樹さんに沢井さんの芸名を相談したところ、ご自分の名前からから一字取って付けて頂けたとのことです。

 新人時代の『海の若大将』は古澤憲吾監督が怖かったとのことです。古澤監督からは泳げて潜れるようにもしておいてくれと撮影前に言われたので絶対無理と思ったのですが、それは監督としての思いを伝えたものらしく、実際の撮影は吹き替えを使ったのだそうです。

 『海の若大将』の撮影では、当時の水着はパットも入っていないので恥ずかしがっていたら、加山さんがバスタオルを背中に掛けとけばと言ってくれたとのこと。後に本多監督の『お嫁においで』でも自信がないのに水着を着せられて恥ずかしかったとのことでした。

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 『お嫁においで』は沢井さんの実質的な初主演作ですが、『フランケンシュタイン対地底怪獣』、『怪獣大戦争』と二本続けて本多監督の映画に出たので、そのつながりで呼ばれたのだと思うとのことです。本多監督には今までより活発な役だからと言われたとのこと。本多監督はやさしい方で、当時は次の映画も本多さんで良かったと思っていたのだそうです。

 『怪獣大戦争』の共演者では、ニック・アダムスさんは変な日本語を覚えてきては、皆を笑わせていたとのこと。土屋嘉男さんは円盤や宇宙人のお話を熱心にされていた、貴女も是非信じなさいと言われたそうです。田崎潤さんは普段は優しいけれどお酒が入ると豪放磊落で大声で話すので、遠くにいてもまた田崎さんが話してるなとわかったとのことです。ロケ先の宿では天気祭と称して毎晩皆でお酒を飲んでいたそうです。

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 中野監督は『怪獣大戦争』では怪獣の出番こそ少ないが、民家を潰すゴジラの足などは大きいものを作ってクレーンに着けて撮影したり、キングギドラのピアノ線も増やして滑らかな動きが出来るようにしたり、新しい試みもしていて前作と比べて特撮カットが少ないと思ったことはないそうです。

 円谷英二特技監督はこの映画が実質的に最後のゴジラ映画の特技監督(次作『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』では有川貞昌監督が特技監督補名目で演出を代行)なのですが、ゴジラのシェーにしても、コントロールが解けて痙攣するところでも、とにかくこの映画では怪獣達の演技を重厚なものではなくコミカルなものに変化させたとのこと。客層を低年齢層に広げる意図があったとのことです。当時円谷監督は64歳、この映画で第20回 (1966年度)の「日本映画技術賞(現・映像技術賞)」を受賞しています。

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 ゴジラのシェーは円谷さんが撮影所長に言われて取り入れたそうですが、手がどっちにすれば正しいのかわからなかったので、中に入った中島春雄さんは両方やっているのだそうです。

 沢井さんと中野監督のトークは素晴らしく、本編と特撮の両方の裏話が聞けましたので、とても楽しく参考になりました。本当は沢井さんの相手役である久保さんもゲストとして来場される予定だったのですが、残念ながら体調不良でお目見えにならず、その代わりに全員に久保さんのサイン色紙が配付されました。沢井さんはからは全員にバレンタインデーのチョコを頂きました。とても嬉しいプレゼントでした。

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2016.01.30

美しいモノクロ画面で紡ぐ交流と成長の物語!・・・『私は泣かない』(日活、1966年)@シネマノヴェチェント

 西横浜のシネマノヴェチェントで日活の1966年公開映画『私は泣かない』を鑑賞しました。未だソフト化がされていない貴重な一本を16mmフィルムで観ることができました。

 上映後には共同脚本の石森史郎さんと主演の和泉雅子さんによるトークショーがあり、お二人の愉快なお話は止まるところを知らず、場内大爆笑の連続で、MCの箕輪館長もたじたじでした。

 映画は女子少年院を仮出所して弁護士の下で保護観察期間を過ごす少女と、肢体が不自由な弁護士の息子の交流とお互いの成長を描きます。単なるお涙頂戴の映画ではなく、息が詰まるほどシリアスな展開で最後まで観客を引っ張ります。監督は石森さんとは同級生だったという吉田憲二(『モスクワわが愛』)で、この映画が初監督作です。

 あくまで石森さんはこの脚本はメロドラマとして書いたとのことを吉田監督には伝えていたのだそうですが、映画はドライなまでに冗長さを排除しています。和泉さんが演じる主人公の早苗もその生い立ちや境遇についてはほとんど描かれていません。でも、観ている内に早苗がどのような経歴の持ち主かが自然にわかるようになっています。

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 家庭というものを知らないで育った早苗が愛情に飢えている一方で、障害を持つ幸男は父親の溺愛でわがままに育ち、対極にはいますが二人とも極度の人間不信になっています。その二人が交流を深めるにつれて理解しあい、お互いを大切に思いやるように変わって行きます。

 ラストの展開も相変わらずドライです。でも、けして冷たいものではありません。そして、幸男が今後どのように生きていくのか、自分の道を見つけた早苗と恋人三郎の将来はどうなるのか、いずれも観客の想像に任されています。石森さんはそのように、例えば早苗と三郎は将来遠距離恋愛を乗り越えて結婚し、幸せな家庭を築くのだろうと観客が想像できる余地を残して書いたとのことでした。

 和泉さんは撮影時にはまだ19歳で、カメラ脇にしゃがんでいる吉田監督が、俳優の演技に合わせて自分も同じように表情を作るのを観て吹き出しそうになったそうです。また、自分の撮影がない日に遊びに行ったら、監督からなぜ現場で他の俳優の演技を見ないと難詰されて喧嘩になったとのこと。エピソードに事欠かない現場だったようです。

 撮影は姫田真佐久さんで、ドキュメンタリータッチの冒頭の夜間シーン等、とても丁寧な仕上がりです。石森さんも和泉さんもこの映画のモノクロ画面の引き締まった美しさは姫田カメラマンのおかげと意見が一致していました。

 この映画には肢体不自由児の通う学園の教師役で芦川いづみが出演しています。30代のミセス役でかつ自らも身体障害を持った子があった設定です。この教師と早苗の交流もこの映画のもう一つの大きな柱で、早苗の気づきと成長の鍵になります。 芦川いづみの落ち着いた演技と美しさとはこの映画でも魅力を発揮しています。

 扱っているテーマ上台詞には現在では使うのをためらうものが多く、ソフト化も難しいのかもしれません。観る機会がなかなかない映画だとは思いますが、一度は観ておくべき貴重な映画だと思います。

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2016.01.24

東宝チャンピオンまつり最後の新作ゴジラ!豪華ゲストによる裏話を堪能!・・・『メカゴジラの逆襲』(東宝、1975年公開)

 1月23日、24日と二日続けて西横浜のシネマノヴェチェントで東宝の特撮映画『メカゴジラの逆襲』のイベント(シネマノヴェチェントでは「特プロ」と称している)に参加しました。映画を観てからゲストのトークショー、サイン会・撮影会に懇親会と盛りだくさんの内容です。

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 『メカゴジラの逆襲』は1975年3月公開の東宝配給映画で、東宝の子会社である東宝映像(当時。現在は「東宝映像美術」)が制作した映画で、初代ゴジラの監督である本多猪四郎監督と東宝三代目特技監督の中野昭慶監督のコンビで作られました。本多監督の劇場映画最終作ですが、東宝チャンピオンまつりの限定されたフォーマットの中では、最良のパフォーマンスを出すことができた作品だと思います。

 前作『ゴジラ対メカゴジラ』が沖縄を舞台にした活劇調のアクション映画だったのに対し、『メカゴジラの逆襲』は悲恋要素もあってメロドラマ的な映画に仕上がっています。特にサイボーグの体となっても心は人間のままで愛と葛藤に苦しむ真船桂のキャラクターが秀逸で、心に残ります。

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 第三惑星人が企む地球征服の尖兵・メカゴジラ。沖縄の戦いでゴジラに敗れ、破壊されはしたが、最新科学技術で復元修理され、さらに、新怪獣・チタノザウルスという強力な味方を得て、再び地球征服に立ち上がる・・・・・・。  大ヒットした「ゴジラ対メカゴジラ」に続く、メカゴジラ・シリーズ第2弾!人間の頭脳にメカゴジラの作動装置を直結して操作したり、改造人間、科学潜水艇が登場するなど、S・F的面白さをふんだんに盛り込んだ、家族そろって楽しめる超娯楽巨編です。  監督は「ゴジラ」「ラドン」「モスラ」と東宝の怪獣ものをつくりつづけてきて定評のある、本多猪四郎。特撮監督を「日本沈没」「エスパイ」の中野昭慶が担当。製作・田中友幸 脚本・高山由紀子。(東宝事業部版劇場パンフレットより)

 イベント初日は特撮を担当した中野昭慶監督と特殊美術の長沼孝さんがゲストで、トークショーでは多岐に渡った特撮の裏話が話され、とても面白くて参考になりました。

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 中野監督はチタノザウルスをもっと真っ赤な色にしたかったとのことでした。着ぐるみが出来上がった当初はもっと透明感があったのに、撮影班が艶消しスプレーを噴くので段々くすんで来てしまったとのことです。中野監督がアメリカのイベントに招かれたときにはチタノザウルス(米国での呼び方は「タイタノザウルス」)がアメリカ人に大人気だったのを知り、早速バンダイの担当者にソフビを作ることを進言したとのことでした(初公開時にはチタノザウルスのソフビは発売されなかった)。

 長沼さんは兵器のミニチュアに思い入れがあり、戦闘機も航空自衛隊百里基地に所属していた第301飛行隊(当時、現在は新田原基地所属)のF-4EJファントムII(当時、現在はF-4EJ改を運用)を忠実に模して作られたとのことです。部隊マーク(マフラーをしたカエル)や尾翼の機体番号も描き込んだのですが、まったく映っていないと嘆かれていました。

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 操演についても戦闘機がバンクして旋回するシーンを撮ってもらいたかったのに、残念ながら装置的には無理で、まるでCCV(F-2のような運動能力向上機)のような動きになってしまっており、折角作ったのにとても残念だったとのことです。

 また長沼さんが当時のメモから『メカゴジラの逆襲』用に新たに作ったミニチュアの数を数えたら、これまでの映画の半分ほどしかなかったのだそうです。この映画は前作と違って都市破壊シーンがありますが、低予算でも工夫してミニチュアを上手く再利用したり、バンク映像を使ったりして完成度の高い見せ場を作っています。

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 二日目はこの映画の脚本を書かれた高山由紀子先生と本編の助監督だった山下賢章監督がゲストで参加されました。お二人のお話もまた貴重なものばかりで、とても参考になりました。

 ゴジラ映画唯一の女性脚本家である高山先生は、この映画の当時は成城にあったシナリオセンターに通う普通の映画好きな若い女性だったそうです。ある日そこで講師をされていた東宝の所健二さん(『メカゴジラの逆襲』では協力製作)から学内のコンペでプロットを書いてみるように言われ、提出して少し経ったら東宝へ所さんに連れられて行くこととなり、そこでお会いしたのがプロデューサーの田中友幸さん(当時東宝映像社長)だっのだそうです。

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劇場パンフレットとゲストのサイン

 田中プロデューサーから好きなように本を書いてごらんと言われて脚本を書いたのだそうですが、それがそのままデビュー作となったとのことで、何も知らなかった自分にとって本当に素敵なデビュー作品ですと高山先生は嬉しそうにお話されていました。

 本当にシンデレラストーリーのようなお話ですが、この映画は高山先生のシナリオが秀逸で寄与するところが大と特撮ファンの間でも評価が高いです。最近でも高山先生が現場に行くと若いスタッフに『メカゴジラの逆襲』を子供時代に見ましたと言われますとのことでした。

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 若い女性が怪獣映画を書くということについては、実は高山先生のお父様が大の映画好きで、高山先生はお父様に連れられて東宝の特撮映画も毎回観ていたとのことです。それで、違和感もなく書けたとのこと。

 また、高山先生にとって登場人物の名前は重要な要素で、真船桂という名前はすぐに浮かんだのだそうです。そう言う場合はうまく書けることが多く、自分の中で既に作品が固まっているということなのだろうとのことでした。

 高山先生はデビューから41年経つけど、もしかしたらデビュー作と同じことを書き続けてきたのかなと思いますとのことでした。

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 山下監督はこの映画の記憶が曖昧だったっため、イベントのために自らDVDを買ってきてご自宅で観てこられたのだそうです。『メカゴジラの逆襲』ならぬ『メカゴジラの復習』だ!との発言には会場内も爆笑でした。

 監督のこの映画に対する思いとして、まずはナイーブな作品だとのことです。山下監督はこの映画がチーフ昇格作で、入社されて5年目だったとのことですからかなり早い昇格です。ベテランの先輩助監督を差し置いてのチーフ昇格を通知されて「ビビッた」そうですが、本多監督は一度は触れてみたい監督だったので引き受けたとのこと。

 本多組では緊張の連続だったそうですが、初めて会った本多監督は色白で柔和な方でとても優しく迎えられたとのこと。スタッフもベテラン揃いでしたが紳士ばかりで優しくしてくれてとても恵まれていたとのことでした。

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劇場ロビーカード

 山下監督と高山先生との出会いは、確かセミオールラッシュの日だったとのことでした。本多監督がエスコートして来られた高山先生を初めて見かけたのだそうです。学生時代シナリオ研究会に所属していた山下監督としては、若くしてシナリオライターで一本立ちの高山さんがとても羨ましかったとのことです。高山さんは山下監督のことは後から知って、当時は現場の方が同じに見えて、まったくわからなかったとのことでした。

 映画が完成したときに本多監督が「ゴジラをチャンピオンまつりなんかに出しちゃだめなんだよ」とポロッと言われたのだそうです。山下監督はこの言葉がとても印象に残っているのだそうです。初代ゴジラを作られた本多監督の本音だったのでしょうか。

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2015.12.05

渡辺裕之さん初監督作品!故郷水戸を舞台にしたヒューマン・ドラマ!・・・『桜田門内の変!?』(日本映画、2012年)

 西横浜のシネマノヴェチェントで俳優・渡辺裕之さんの初監督作『桜田門内の変!?』を鑑賞しました。

 この映画が誕生した経緯はとても面白いものがあります。まず茨城県のご当地映画として2010年に公開された佐藤純彌監督の映画『桜田門外ノ変』があります。吉村昭・原作の歴史小説で主演は大沢たかおさん。井伊直弼を襲撃の見届け役である水戸藩士役で渡辺裕之さんも出演しています。

 『桜田門外ノ変』は茨城県内の官民が全面協力しており、約2億5000万円をかけて水戸市の千波湖畔に巨大な桜田門のオープンセットが組まれました。ここでクライマックスの襲撃シーンが撮影されたそうですが、その後このオープンロケセットは記念館を作って一般公開されました(2013年3月31日に閉館)。

 『桜田門内の変!?』は、まだ水戸に桜田門のオープンロケセットが残っている時期にプロデューサーの渡辺さんが故郷水戸に映画監督の市川徹さんと訪れてこのロケセットを使って映画を作ろうという話になり、予算は250万円、渡辺さんも一割出資されたとのことです。ストーリーは『桜田門外ノ変』の制作過程をモチーフにしていますが、当然フィクションです。

「『桜田門外ノ変』の映画を市民で作りませんか?」茨城県庁に突如として現れた、映画プロデューサーを名乗る男。半信半疑で話を聞く、観光物産課の女性係長。彼女は次第にプロデューサーの熱意に触発され、映画制作に向けて邁進していく。しかし、男はある思いを胸に秘めていた…(映画公式サイトより)

 企画・製作の市川徹監督はこれより以前に『万年筆』という富山県のご当地映画を渡辺さんと竹内晶子さん主演で撮っており、その映画でのお二人の役名が薫と三郎でした。『桜田門内の変!?』でもお二人が再共演することになり、また役名が薫と三郎です。この後、二本お二人の共演作(『HAPPY!メディアな人々。』と『TAKAOcan Dream〜がんばれ!サンダーバーズ!!〜』)が作られており、薫と三郎シリーズと呼ばれています。

 映画の上映後には渡辺さんと竹内さんによるトークショーがありました。渡辺さんの参加が決まったのは当日の未明だったので、観客はごく少なかったのですが、少人数でも熱く語ってくれたゲストのお二人には感謝です。

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2015.11.27

夢うつつの境目で翻弄される男の結末は!?不条理で美しくミステリアスな英国流日本映画!・・・『スターフィッシュホテル』(日本映画、2007年)@シネマノヴェチェント

 西横浜のシネマノヴェチェントで『スターフィッシュホテル』を鑑賞しました。数多の文学や映画へのオマージュが詰まった映画です。

 『スターフィッシュホテル』は2007年公開の映画で、佐藤浩市、木村多江、柄本明と言ったメジャーな俳優が出演しているミステリアスな映画です。

 佐藤浩市演じるサラリーマンの有須(ありす)が主人公です。黒田ジョウという人気作家のミステリー小説ファンである彼は、木村多江演じる妻ちさととは倦怠期に差し掛かっていたのですが、ある日、突然妻が失踪してしまいます。

 どうやら妻の失踪は有須にまとわりつく宣伝用の着ぐるみを着た謎のウサギ男が事件の鍵を握っているようです。ウサギ男にも翻弄される有須。妻を捜す有須は現実と悪夢をさまよい歩き、次第に迷宮の世界へと引き込まれて行きます。このウサギ男を柄本明がとことん不気味に演じます。

 二年前に旅先で関係を持ってから不倫関係が続いている謎めいた女佳代子の件も関係があるようです。佳代子は有須の都合のいい女になりたくないと、北国の自分の領域に有須が遭いに来ることを強いています。言われるがままに佳代子に会いに行く有須。翻弄されています。この謎めいた女をKIKIがアンニュイに演じていて、良い味を出しています。

 小説家の黒田ジョウまで有須の前に姿を現します。黒田の新作『スターフィッシュホテル』を読んだ有須は驚愕します。自分が翻弄されている一連の出来事がすべてこの本の中に書かれていたのです。混乱の極みとなる有須・・・。これもどこまでが現実なのかわかりません。

 幻想的ではありますが、超自然的な力が描かれている訳ではなく、ミステリとして成立しています。とにかく、有須が夢ばかりみているので、今見せられている場面が現実なのか夢なのか、観客としては戸惑います。でも、よく考えてみれば、夢も現実もその境目は曖昧で、区別が付かないものなのかもしれません。そして、一番曖昧で理解し合えないのはやはり男と女なのかもしれません。

 今日が上映最終日で、終映後にはジョン・ウィリアムズ監督を囲んでの懇親会が開催され、参加してきました。懇親会で話したジョン・ウィリアムズ監督はきさくでやさしいイギリス人でした。

 監督は英国映画の冬の時代にちょうどバブル絶頂期の日本に来て名古屋に住み、ビデオで古い英国映画を見まくったとのことです。英国では観られない映画も日本ではビデオで観られるので、映画の天国に来たと思ったそうです。潰れた貸ビデオ屋から一本三百円で大量に買ったVHSで一大ライブラリが出来たとのこと。特にフィルム・ノワールには影響を受けているとのこと。

 『スターフィッシュホテル』についても、裏話を聞くことが出来ました。主人公の有須という名前からもわかるように不思議の国のアリスがメインのモチーフなのですが、実は裏に村上春樹氏のミステリー作品へのオマージュがあるのだそうです。ジョン監督が名古屋から東京に出てきた直後、孤独のため村上春樹の小説を読みふけった時期があったのだそうです。

 不思議の国のアリスですからウサギが登場します。ちょっと不気味なものです。当然観客は『ドニー・ダーコ』を思い浮かべるので監督に聞いてみたところ、この時期に監督は未だ『ドニー・ダーコ』を見ておらず、指摘されて知ったとのこと。もし知っていたらウサギにはしなかったかもしれないとのことです。
 
 有須が佳代子と出会うホテルは会津にある古い建物の外装をデコレーションしたとのことです。ヒトデを貼り付けて看板を変えているとのこと。

 シネマノヴェチェントのジョン・ウィリアムズ監督特集は、明日からは『佐渡テンペスト』です。一本一本が全く違う作風となるジョン監督の次回作は、もしかすると徹底的に和風なものになるかもしれないとのこと。要注目なジョン監督がずっと自由に映画を撮れる日本であって欲しいものです。

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2015.10.31

町田で観る日本推理文壇の歴史!・・・『没後25年 日影丈吉と雑誌宝石の作家たち』展@町田市民文学館ことばらんど

 町田市民文学館ことばらんどで『没後25年日影丈吉と雑誌宝石の作家たち』展を鑑賞しました。

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 日影丈吉さんは晩年を原町田で過ごされたとのこと。その縁で、地元町田市がこの展観を企画したのだそうです。

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 今日は13時半から関連企画の映画会もあるとのこと。

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 建石修志画伯や杉本一文画伯の貴重な原画も展示されており、見応えがあります。

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 日影丈吉と言えば、やはりこの展観のポスターにもなっている『暗黒のメルヘン』が代表作なのかなと思います。

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 自分は雑誌『幻影城』などで作品を知ったのみだったのですが、この展観を観て改めて読んでみる気になりました。

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 早速受付で図録と共に河出文庫の『日影丈吉傑作館』を買いました。

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(12月20日追記) 

 今日は町田市民文学館ことばらんどで開催中の『没後25年 日影丈吉と雑誌宝石の作家たち』展の最終日なので再訪してみました。

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 なんと今日は入場無料でした。しかも千円の図録を買ったら展観のポスターを貰えました。

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2014.09.14

第一回朝松健ホラー教室!止まるところを知らぬホラー話!…『ナイトランド・セッション#1 「ホラー作家が出来るまで」朝松健x黒史郎』@Cafe Live Wire

 昨晩に続き新宿Cafe Live Wireでトークを聴講しました。今夜は『ナイトランド・セッション#1』です。朝松健先生がホストになり、休刊中のホラー雑誌『ナイトランド』の復刊を目指す企画の初回とのことで、最初のゲストは黒史郎先生です。

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 今夜は「ホラー作家が出来るまで」と題して黒先生の少年時代のお話を聞く筈だったのですが、朝松健先生のお話は止まるところを知らず、脱線に次ぐ脱線でゲストの黒先生がお話するどころか聞き役に廻って、しかも絶句する場面が頻出しました。結局爆笑あり恐怖ありで二時間のトーク予定が三十分以上も延長となりました。朝松先生の話題の多さ広さ深さには脱帽です。まさに『第一回朝松健ホラー教室』です。

 黒先生はそれでも、朝松先生の話の間隙を掻い潜り、少年時代の写真まで紹介されて、蠱術を使う初恋の少女や、礫の術を使う男の話をされました。京都のホテルでの幽霊目撃談もリアルで場内は大いに沸きました。黒先生は少年時代から情報収集してきた妖怪を手描き図鑑にしたとのことで、コピーした冊子を全員にプレゼントしていただき、力作揃いでビックリ、一同大感激でした。

 朝松先生があくまで噂話として、『ナイトランド』は復刊に向けて水面下で動いているらしく、もしかすると来年5月に復刊するかもしれないこと、11月には復刊準備号が出るかもしれないこと、しかも翻訳と画集が収録されるかもしれないことを話されました。期待したいです。

 次回の『ナイトランド・セッション#2』は10月11日(土)に画家の高橋葉介先生をゲストに開催されるとのことで、これもまた楽しみです。最後に朝松先生は、黒先生は面白いから是非もう一度来て欲しいと仰っていました。是非期待したいと思います。

 トーク後のサイン会は朝松先生には当日会場で先行販売した『およもん 妖怪大決闘の巻』と最新短編集の『棘の闇』、持参した『弧の増殖』、それに創土社CMF『崑央の女王』『チャールズ・ウォードの系譜』にサインをいただきました。

 黒先生には創土社CMF『インスマスの血脈』や黒先生が菊地秀行先生他と対談された『世にも不思議な物語』にサインをいただきました。

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2014.08.30

池野成が手がけた大映ホラーの傑作二本!『妖怪大戦争』と『牡丹燈籠』を堪能!…『作曲家 池野成の仕事』@神保町シアター

 昨日に引き続き神保町シアターで映画を鑑賞しました。『妖怪大戦争』と『牡丹燈籠』という大映怪談映画です。今日から『作曲家 池野成の仕事』というかなり濃いコアな特集が初まっています。池野さんが音楽を担当した和製ホラーは二本だけですが、その両方を続けて観ることができたのは貴重な体験でした。初日なので上映後にはトークショーもありました。

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 『妖怪大戦争』はDVDやテレビ放映では何度も観ていますが、劇場で観るのはおそらく初めてです。バビロニアの妖怪ダイモンがなぜ日本にやってくるのか、ずっとその理由がわからなかったのですが、どうやらたまたま見つけた船がアジアに向かう交易船で、それに取り付いて日本の近くまで来たようです。上陸したのが伊豆の下田ですから、まるでペリーの黒船のメタファーのようです。

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 ダイモンは着ぐるみですが、中には大魔神三部作でタイトルロールを演じた橋本力が入っています。大魔神と同じく鋭い眼差しの目は橋本本人のものです。

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 前作の『妖怪百物語』と違い、とにかくこの映画のすごいところは、日本妖怪がちゃんと個性を持って登場することです。怪異の対象ではなく、主要な主人公となっています。そして、戦いを終えた日本妖怪達が歓喜しながら踊って山野に帰っていくところをハイスピードで撮影したシーンは感動的です。

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   『牡丹燈籠』は初見だったのですが、これは見ておくべき一本です。三遊亭円朝の原作落語にほぼ忠実ですが、この映画での幽霊は悪者の狂言ではなく、実在したことになっています。
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 赤座美代子と本郷弘次郎がお露と新三郎なのですが、この映画の恐怖シーンのほとんどはお米役の大塚道子が担っています。昨年物故された俳優座代表の若き日の名演です。幽霊達は吊られたりもしており、かなり重労働させられている様子でした。監督は山本薩夫なので、まさに反封建制度の象徴のような主人公達になっています。
 
 この映画では終盤に登場してすべてを持って行ってしまう小川真由美が一番の儲け役でしょう。幽霊よりも恐ろしい強欲な女房役です。一番怖いのは人間の女ですね。

 上映後のトークショーは、池野成に造詣の深い片山杜秀さんと出口寛泰さんの対談でした。池野さんの生前のインタビューも聴くことができ、一時間半近くにも及ぶとても濃い内容でした。

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2014.08.17

真夏の夜は怖い映画を!『帝都物語』、『地獄』、『マタンゴ』、狂気の三本立て!…『京都怪奇映画祭NIGHT』@京都みなみ会館

 昨夜から今朝にかけて京都みなみ会館で『京都怪奇映画祭NIGHT』を堪能してきました。実相寺昭雄監督の『帝都物語』、中川信夫監督の『地獄』、本多猪四郎監督の『マタンゴ』という力作揃いです。『帝都物語』で帝都の破壊を企てる魔人・加藤保憲を演じた嶋田久作さんのトークショー+サイン会もあって、充実した一夜でした。

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 『帝都物語』は好きな映画なのでVHSやDVDで何度も観ています。今回初めて劇場で、かつフィルム上映で観ることができました。荒俣宏氏の大長編を二時間半に収めるのはもとより至難の技と思いますが、ダイジェスト版のようにならずにまとめ上げたのは実相寺監督の力量の成せる技です。今回観て、意外に特撮シーンが多いことに気づきました。  加藤保憲役の嶋田久作さんは『帝都物語』が映画デビューとのことです。最近再見して自分の「声が高かった」ことに驚いたと上映後のトークで語っていらっしゃいました。加藤あっての映画であり、ベテラン揃いのキャスト内でも嶋田さんの存在感は群を抜いています。
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 次に中川監督の『地獄』です。これは初見でした。異常と言っても良いプロットと映像表現が続きます。映像が美学にまで昇華している『東海道四谷怪談』と比べると、あくまでも下衆な表現を徹底し尽くしており、最初からカルトになるべくしてなった映画と言えます。

 天地茂演じる小心者の学生が経験するこの世の地獄とあの世の地獄が描かれます。この世の地獄の映像表現は凝ったカメラワークが使われますが、あの世の地獄の表現はどストレートです。鬼に金棒で口を叩き壊される亡者の痛みは観客にそのまま伝わります。

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 最後の一本は『マタンゴ』です。この上映に合わせてロビーで中野昭慶監督お勧めの「きのこもち」が販売されました。

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2014.07.12

『バルテュス最後の写真 -密室の対話』展@三菱一号館美術館歴史資料室

 丸の内の三菱一号館美術館内にある歴史資料室で開催中の『バルテュス最後の写真 -密室の対話』展を鑑賞しました。バルテュス最晩年にモデルのアンナ・ワーリさんを撮影したポラロイド写真の展示です。アンナさんは8歳から16歳まで8年間もバルテュスのモデルをしていたそうです。

 モデルのポーズはほとんどが同じで、長椅子に寝そべって胸は露わになっている写真がほとんどです。歴史資料室の狭い空間で観ていると、かなり淫靡に感じます。

 モデルと同じポーズの少女が描かれたバルテュスの絵が写っている写真もありました。バルテュスが長い時間をかけてモデルのアンナ・ワーリとの無言の対話を通じて作品を仕上げて行ったことが見て取れます。

 入場料は500円ですが、上野のバルテュス展の半券を見せると100円引きでした。ヴァロットン展の半券でも同様のようです。

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