カテゴリー「4.【美術鑑賞】」の記事

2015.11.22

19世紀ヴィクトリア朝美術を俯瞰!アカデミズムから象徴主義まで!・・・『リバプール国立美術館所蔵 英国の夢 ラファエル前派展』@名古屋市美術館

 今日は母と名古屋へ出かけ、白川公園の名古屋市美術館で『リバプール国立美術館所蔵 英国の夢 ラファエル前派展』を観賞しました。英国リバプール国立美術館の所蔵作品が65点展示されています。

 リバプール国立美術館というのは単一の美術館ではなく、英国リバプール市内及び近郊にある7つのミュージアム(内美術館はウォーカー・アート・ギャラリー、レディ・リーヴァー・ギャラリー、サドリー・ハウスの三つ)の総称とのことで、19世紀ヴィクトリア朝の美術品の宝庫とのことです。

 日本語の題名だけでは誤解してしまいそうですが、この美術展は純粋にラファエル前派兄弟団(PRB,"Pre-Raphaelist Brotherhood")の作品だけではなく、彼らが批判したロイヤル・アカデミーの画家達も展示しており、英題"Pre-Raphaelite and Romantic Painting"のように19世紀ヴィクトリア朝に花開いた唯美的かつロマンティックな傾向を持つ作品群を特集した展観と言えます。

 市立美術館入口脇にはジョン・エヴァレット・ミレイの「いにしえの夢─浅瀬を渡るイサンブラス卿」の看板が掲げられていましたが、展示自体もこの絵が最初に展示されています。音声解説では馬がキャンバスと不釣合いなほど大きくなったので、ミレイは修正を加えようと努力したのだそうです。

 展示は4章に分かれており、ミレイ、ロセッティのラファエル前派創始者達と、サンズ、ブラウン、ヒューズら同時代の画家を特集した「I.ヴィクトリア朝のロマン主義者たち」からスタートです。「I.ヴィクトリア朝のロマン主義者たち」でのミレイの作品は8点あります。今回目玉になるのは「ブラック・ブランズウィッカーズの兵士」だと思います。

 ナポレオン軍と戦うプロシャの義勇兵の若い兵士が、出征前に恋人と別れを惜しむ光景を情感豊かに描いたロマンチックな絵です。その兵士はイギリス軍に加わってナポレオン軍と戦った「ブラック・ブランズウィッカーズ」の軍服を着ています。英国では英雄視されている歴史上の軍隊ですから、この兵士にこれから起こることを思い、見るものは涙するのかもしれません。恋人は兵士をドアの前で引きとめようとしているようです。

 ミレイと並んで重要なラファエル前派創始者の一人であるダンテ・ガブリエル・ロセッティは2点のみが展示されています。ミレイと比べて少ない点数です。それでも、アレクサ・ワイルディングがモデルの「シビラ・パルミフェラ」とウィリアム・モリスの妻ジェイン・モリスがモデルの「パンドラ」という有名な作品が来ていました。

 「I.ヴィクトリア朝のロマン主義者たち」に続くのはIIではなく「IV.19世紀後半の象徴主義者たち」。これは展示場の都合らしく、ここまでが一階でした。「IV.19世紀後半の象徴主義者たち」にはワッツ、バーン=ジョーンズ、ウォーターハウスら有名な画家の作品が並びます。

 ジョン・ウィリアム・ウォーターハウスの「デカメロン」はこの美術展の目玉の一つで、看板にもなっていました。ボッカチオの『デカメロン』に着想を得て描かれた男女9人の庭園での語らいの絵です。いつの時代もどの国も、若者達が引き付けあうことは変わりないのだな、と思いました。

 二階に移ると「II.古代世界を描いた画家たち」としてフレデリック・レイトンをはじめとして、ワッツ、アルマ=タデマ、 ポインター、ムーアらアカデミーの画家達の唯美主義的な作品が多く展示されていました。

 最後は「III.戸外の情景」として、自然描写を取り入れた作品群ですが、少ない点数のコーナーでした。ラファエル前派は緻密な自然描写がその特徴のひとつですが、フランスの写実主義とは違い、あくまでもロマン主義的であり、その一点ではアカデミズムとも唯美主義とも根底では繋がっています。

 この展観は名古屋展が終わると東京へ巡回しますが、東京でも再度観たいと思います。

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2014.12.07

冬の横浜でジャポニズムの真髄を観る!…『ホイッスラー展』@横浜美術館

 久しぶりに横浜みなとみらい地区へ行きました。桜木町駅前で映画を観てから横浜美術館に移動し、待望の『ホイッスラー展』を鑑賞しました。

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 ジェームズ・マクニール・ホイッスラーは19世紀後半に欧州で活躍したアメリカ人画家です。画風は独特ですが、印象派の画家たちと年代的には同時代なので、浮世絵などの日本美術に強く影響を受けているところは印象派の画家達と同様で、ジャポニズムの画家として有名です。

 この展観は横浜に巡回する前には京都国立近代美術館で開催されていましたが、同時期に同じ岡崎公園内の京都市美術館では『ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展-印象派を魅了した日本の美』が開催されており、続けて鑑賞すればきっとジャポニズムに浸ることができたのでしょう、うらやましい限りです。

 横浜美術館二階の展示会場は空いていて、ゆったりと観られました。私はホイッスラーの油彩画が好きなので、この展観には大いに期待していたのですが、油彩画よりもエッチング等の版画作品がメインとなった展示内容でしたのでちょっと拍子抜けでした。

 しかし画家自身が「銅版画に名声をかける」と言ったということなので、版画作品はむしろホイッスラーの本領発揮であり、展示が多いのもまた当然のことなのでしょう。

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 今展のポスターイメージはホイッスラーの愛人だったジョーをモデルにした『白のシンフォニーNo.2』と『No.3』なのですが、ジャポニズムの視点からの目玉はむしろオールド・バタシー・ブリッジをモチーフにした『ノクターン:青と金色』だと思いました。いずれにしてもジャポニズムのコーナーには力が入っていました。

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注:"JP"と記載された写真はAmazon..co.jp(日本)に、"UK"と記載された写真はAmazon..co.uk(英国)に、"USA"と記載された写真はAmazon.com(米国)にリンクしていますので、ご注意ください。

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2014.10.11

スイスが誇る国民画家!…『フェルディナント・ホドラー展』@国立西洋美術館

 久々の都心です。上野の国立西洋美術館で『フェルディナント・ホドラー展』を鑑賞しました。

 スイスが誇る国民画家のレトロスペクティヴです。代表作の壁画や大きな作品は来日が叶わないので残念ですが、ベルン美術館や隣町ヴィンタートゥールの美術館、それに個人所蔵のものなど珠玉の105点の展示は圧巻で日本初という意味でも快挙と思います。

 ホドラーは19世紀末から20世紀初頭に活躍した世紀末の画家の一人と言えます。分離派展にも出展して好評を得ています。象徴主義の画家に分類されることが多いですが、作風は独自で自然主義からポスト印象主義まで様々な様式を取り入れています。

 この展観は「日本・スイス国交樹立150周年記念」の一つとのことですが、今年はバルテュス、バロットン、チューリッヒ美術館と来て、このホドラーまでずっとスイス美術を堪能できました。欲を言えばアンカー、クレー、セガンティーニにギーガーの回顧展も観たかったと思います。

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2014.07.31

真夏の砧公園で19世紀末日本美術とその影響を並べて観る!…『ボストン美術館 華麗なるジャポニズム展 印象派を魅了した日本の美』@世田谷美術館

 今日は午後から世田谷美術館を訪れました。『ボストン美術館 華麗なるジャポニズム展 印象派を魅了した日本の美』を鑑賞です。クロード・モネの『ラ・ジャポネーズ』が約20年ぶりに来日しているので、楽しみにしていました。

 用賀駅から直通バスが出ているが、ちゃんと『ラ・ジャポネーズ』のラッピングでカミーユが笑いかけています。

 展観自体は印象派に影響を与えた日本美術が中心となっています。日本美術は浮世絵と工芸品がほとんどで、それらを本歌取りしたか、あるいは影響を受けたと思われるジャポニズム作品が並んで展示されている場合が多く興味を引きました。

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2014.07.12

『バルテュス最後の写真 -密室の対話』展@三菱一号館美術館歴史資料室

 丸の内の三菱一号館美術館内にある歴史資料室で開催中の『バルテュス最後の写真 -密室の対話』展を鑑賞しました。バルテュス最晩年にモデルのアンナ・ワーリさんを撮影したポラロイド写真の展示です。アンナさんは8歳から16歳まで8年間もバルテュスのモデルをしていたそうです。

 モデルのポーズはほとんどが同じで、長椅子に寝そべって胸は露わになっている写真がほとんどです。歴史資料室の狭い空間で観ていると、かなり淫靡に感じます。

 モデルと同じポーズの少女が描かれたバルテュスの絵が写っている写真もありました。バルテュスが長い時間をかけてモデルのアンナ・ワーリとの無言の対話を通じて作品を仕上げて行ったことが見て取れます。

 入場料は500円ですが、上野のバルテュス展の半券を見せると100円引きでした。ヴァロットン展の半券でも同様のようです。

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2014.06.14

日本初のレトロスペクティヴ!スイス生まれのシニカルな都会派画家!…『ヴァロットン展』@三菱一号館美術館

 今日も休日出勤したのですが、空調が効かないので暑くて、さすがに我慢できずに退散して、三菱一号館美術館で今日から開催の『ヴァロットン展』を観て来ました。

JP

 フェリックス・ヴァロットンはスイス生まれでパリで活躍した画家です。フランスでは「外国人のナビ」と呼ばれたナビ派の画家だったのですが、次第に独自の画風になります。また、コントラストの強い木版画も人気でした。1898年にルヴュ・ブランシュ社から出版された、10枚セットの「Intimités」(親密)は特に有名で、大人の男女の関係を淫靡に描いています。

 今回のヴァロットンの回顧展はパリ、アムステルダムと巡回して日本に上陸しました。ヨーロッパでの図録を見ると日本では展示されない絵もあったらしく、少し残念です。でも、日本でこれだけヴァロットンを見ることができる機会は初めてです。これからもそうはないでしょう。展示品の油彩と木版画のバランスも良かったです。

 やはり、初期から中期の作品には見るべきものが多いと思いました。20世紀に入ってからの絵は、技術的な進歩はあっても、まったく魅力的ではない裸婦、何を狙ったかわからない擬似肖像画、お笑いとしか思えない神話画と、痛々しさが出た作風で好きではありません。

 この展観のサブタイトルは『冷たい炎の画家』なのですが、私には理解不能です。キャッチフレーズに「裏側の視点」というのもありますが、これもよくわかりません。シニカルだ、ということなのでしょうか。もう一度じっくり観て意味を確かめるべきでしょうか。

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2014.02.10

テート・ブリテンからの至宝!でも男女関係の方が興味を引く?!…『ラファエル前派展』@森アーツセンターギャラリー

 今日は午後休みにして暖かい都心を彷徨いていました。汗かいて風邪を引きそうでした。六本木ヒルズの森アーツギャラリーで『ラファエル前派展』を鑑賞です。

 日本人の大好きな印象派も大好きですが、19世紀後半以降の近代西洋絵画全般も好きです。でも、あまりにコンテンポラリーなのはNG。だから、今森タワーでやってる『ラファエル前派展』と『アンディ・ウォーホル展』の両展観はどちらも興味があります。今日はラファエル前派だけにしました。

 テート・ブリテンから多くの有名な作品が来ています。出口近くに『ベアタ・ベアトリクス』と『プロセルピナ』が並んでるけど、ロセッティが好きな方はたまらないでしょうね。

 私はウィリアム・ホルマン・ハントの『良心の目覚め』が好きで、実物をまた観ることができて嬉しい限りです。久々に美術展の図録も買ってしまいました。

 月曜開館の美術館は少ないのですが、ここは会期中無休とのことです。コインロッカー(チケット売り場の階にしかなく、しかも有料)の数が少なく、いつも空いていないことが多いのですが、申し出れば52階入口の受付に荷物を預けることができます。

 テート美術館にはもう二十年近く前に一度だけ訪れたことがあります。まだ、テート・ブリテンやテート・モダンと言った分かれ方はしておらず、今のテート・ブリテンがテート・ギャラリーと呼ばれていました。その時はあまりお目当ての作品が観られませんでした。

 ラファエル前派兄弟団は短い期間の活動で当初の理想もすぐに何処かに行ってしまいましったが、むしろ個々の活動が深まった後期の作品の方が味のあるものが多いです。それに加えて内部の複雑な男女関係がスキャンダラスで面白く、そちらの方が興味を引きます。

 ラファエル前派兄弟団の中でも、ロセッティは良くも悪くも中心人物です。ミレイの傑作の『オフィーリア』のモデルだったエリザベス・シダルを妻にしたのに、アニーだのファニーだの愛人兼モデル兼家政婦のような女性が存在しました。

 ロセッティの艶福家ぶりは弟子のウィリアム・モリスの妻ジェーンに手を出すという、有名な三角関係のスキャンダルでもわかります。ロセッティ晩年のあの外見を見ると、男は見た目じゃないな、と勇気づけられますが、まあ、女性に優しい男だったのでしょう。

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2012.09.25

40年ぶりの来日も!本場アントワープ王立美術館コレクション!…『ジェームズ・アンソール展 -写実と幻想の系譜-』@損保ジャパン東郷青児美術館

 今日は久々の新宿でした。損保ジャパンの美術館で『ジェームズ・アンソール展 -写実と幻想の系譜-』を観てきました。アントワープ王立美術館のコレクションですが、40年ぶりに来日した絵もあります。ちなみに私は40年前の『ジェームズ・アンソール展』を愛知県美術館で観ました。まだ中学生でしたが図録まで買ってしまい、今でも持っています。

 美術館のある損保ジャパンビル高層階から観た風景です。間近で見るコクーンタワーって威圧感ありますね。

 しかし、ジェームズ・アンソール展が入場料千円って、良心的過ぎますよね。それと比べて上野でやってる某展なんて…。

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2012.09.17

最終日も満員の館内!イベント感あふれる「真珠の首飾りの少女」の初来日!…美術展『マウリッツハイス美術館展』@東京都美術館

 今日は上野恩賜公園に先週のリベンジにやって来ました。もちろん東京都美術館の『マウリッツハイス美術館展』です。なんと今日は最終日、しかも夜8時まで開室ということで、最後の最後にやってきたのです。

 マウリッツハイス美術館は、オランダのハーグにありますが、もう15年ほど前にオランダ旅行して、ここに行くためだけにハーグへ寄ったことがあります。王宮(つまりハウステンボスね)のすぐ近くの小さな建物でした。お客さんは少なかったけれど、各国語が飛び交って国際的でした。

 『真珠の耳飾りの少女』は当時『青いターバンの肖像画』とか呼ばれていたような気がします。マウリッツハイス美術館の二階で、『デルフトの眺望』か、あるいは町中を描いたもう一点だかの反対側の壁に掛かっていたと思います。周りに誰もいませんでしたから、じっくりと眺めていたのを覚えています。

 さて、今回のマウリッツハイス美術館展は点数は多くありませんが、さすが王立ギャラリーだけあって、レンブラントにルーベンスにヴァン・ダイクに花のブリューゲルにライスダールにヤン・ステーンに、もちろんフェルメール。一点もののバーターのオランダ風俗画満載の展観とは違う密度の濃さを堪能できました。

 音声ガイドの解説点数も16+3で多くありませんが、この展覧会のイメージキャラクターである武井咲さんも参加しています。ファンの方ならたまらないのでしょうね。武井咲さんは17世紀のオランダ娘の設定で、あの鼻にかかって舌っ足らずなしゃべり方でガイドしてくれてます。武井さんのパートは解説よりも雰囲気作りです。

 この美術展は既に先週の時点で入場者数が70万人を突破したそうですが、最終的にはこの三連休の上積みでどこまで伸びたのでしょうか。上野の杜でのライバルは、ベルリン美術館展じゃなくて、黄金の仮面ならぬ「黄金のカノポス」で健闘するツタンカーメン展ですね。

 出口近くには武井咲さんが着た衣裳も展示されてました。

 最終日まで混んでましたけど、さすがに最終日の閉館2時間前にもなると空いています。これから観る方は待ち時間ゼロです。

 ちなみに国立西洋美術館の 『ベルリン美術館展』も今日でお終い。フェルメール三点が同時に上野の杜から去ってしまって、寂しくなりますね。

 しかし、15年ぶりに観たフェルメールの『真珠の耳飾りの少女』は、すっかり武井咲さんのイメージに置き換わってしまったのでした。

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2012.09.09

フェルメールの「真珠の首飾りの少女」初来日!音声ガイドは微妙!?・・・『ベルリン美術館展』@国立西洋美術館

 リニューアルした東京都美術館で開催されている『マウリッツハイス美術館展』を観るために上野恩賜公園に来ました。すごい人気です。東京文化会館横の立看板では待ち時間50分となっていましたが、窓口では待ち時間80分に増えていました。待つ人の行列は館内に収まりきらないので、炎天下外に並ばされています。とても我慢できないだろうと今日のところは諦めて、国立西洋美術館へと行くことにしました。

 国立西洋美術館では『ベルリン美術館展』を開催中です。これも9月17日までなので会期末なのですが、マウリッツハイスほどは混んではいませんでしたので、すぐに入場できました。さすがにレンブラントとフェルメールの展示されている部屋は混んでいますが、他の部屋はじっくりと観ることができました。

 マウリッツハイスの方の売り物はフェルメールの『真珠の耳飾の少女』ですが、こちらのベルリンの方は同じくフェルメールの『真珠の首飾りの少女』が前面に押し出されています。「耳」か「首」の違いです。面白かったのは、国立西洋美術館の窓口付近で、「こちらはベルリン美術館展です。耳飾の少女はありません!」と係員が暑い中連呼していたことです。きっと間違えて入ってしまう方が続出していたのでしょう。

 音声ガイドがすべて小雪さんだったのはファンには嬉しいのでしょうね。ガイドは24点だけだったので少ないなと思いました。でも、特製ガイドブックが付いていますから、まあ仕方がないかな。

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