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2017年9月の記事

2017.09.17

ヤグ・サハ?!AIPのラブクラフト原作二本立!・・・『怪談 呪いの霊魂』『ダンウィッチの怪』



都内某所で未見だったAIPのラブクラフト原作作品を二本鑑賞しました。

一本目は63年作(日本公開は65年)『怪談 呪いの霊魂』です。ロジャー・コーマンが監督した一連のポー・シリーズの一編なのですが、ポーの詩『幽霊宮殿』が英題とはなっているものの、実際はH・P・ラブクラフトの『チャールズ・ウォードの怪事件』をモチーフにしたオカルト色の濃い作品です。

脚本は晩年のチャールズ・ボーモントで、さすがに一捻り二捻りする展開は上手いです。原作の農場地下洞窟での異形の地獄絵図を街中で繰り広げて、ウォードと先祖カーウィンの成り替わりを精神乗っ取りに変更するなど、ボーモントらしいアイデアで作品を面白くしてもいます。

邦題の陳腐さは逆に当時の大蔵映画の開き直りを意気に感じて好ましいし、実際に西洋怪談であり、呪いであり、霊魂だから間違っていません。公開当時は怖くて怖くて、とても観に行けるものではなかったのですが、今となってはコーマンの作った映画群の中では名作となっていることが素直に嬉しいです。

主演のヴィンセント・プライスの顔芸とも言える表情のみでの入れ替わり表現や、この映画を最後に引退したデプラ・パジェットの美貌等も見どころです。AIP特有の毒々しいカラーに彩られたこの作品を鑑賞することが出来てとても満足しています。



二本目は70年の日本未公開作品『ダンウィッチの怪』です。ラブクラフトのファンからも映画ファンからもダメ出しされ続けている珍しい作品で、これも逆の意味で観たかった一本です。

原作に沿って作ろうという意図はわからないでもないのですが、とにかく映像がチープで観ていられません。ラストの丘の上の闘いがまた訳がわかりません。アーミテッジ教授が何をしたのか誰か教えて欲しいです。

邪教の生贄としてウィルバー(犬に噛まれずに元気にヨグ・ソトースを召喚しようと画策する)の手に落ちるヒロインには元アイドル女優のサンドラ・ディー。

『避暑地の出来事』から10年以上経って、こんな映画に出る迄に落ちぶれてしまっていたのかと思うと、可哀想になりました。『避暑地の出来事』の頃はまだハイティーンだったので、この映画でもまだまだ二十代なのですが、顔が疲れています。苦労したのでしょう。

今ならラブクラフトの諸作品もCGを使いまくって描けるのでしょうが、70年代にアナログな手法で手作り感溢れる邪神世界を描こうとしたコーマンやダニエル・ハラーには敬意を表したいと思います。

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2017.09.16

時間との闘い!全ては一つに収斂する?!・・・英蘭仏米合作映画『ダンケルク』

2Dでクリストファー・ノーラン監督の『ダンケルク』を鑑賞しました。本来IMAXで観ないと鑑賞したことにならないのでしょうけど、近くにはIMAXシアターがないので仕方ない選択です。

ダンケルク大撤退を描く戦争映画なのですが、陸:浜辺で艦船を待つ兵士達の一週間、海:徴用されて海峡を渡る英国の民間船の一日、空:作戦を援護するためにたった三機でダンケルクへ向かうスピットファイヤの編隊の一時間と、三つの視点の時間経過を意図的にずらして紡ぎ合わせてあります。

ノーラン監督は『イントレランス』を意識したらしいのですが、三つの時間軸は当然106分の中では圧縮度合いが違っています。一つの視点で語られた場面が、また違う視点で再現されるので、ボヤッと観ていると混乱するかもしれません。

台詞が極端に少なくて、ドイツ軍の兵士も顔を見せません。英軍パイロットの最後まで飛び続けるファリアもずっとマスクをし続けて最後になってやっと素顔を見せます。映画は映像で見せることに徹底して、あくまでもこの伝説の作戦を淡々と描いています。

ダンケルク大撤退戦の民間船による兵士救出はかなりの部分が伝説としても、対岸に居る若者達を救おうとして海峡を渡ろうとした船がいたことは確かです。この映画は未だに現役のそれらの船を使って撮影されたとのことで、英国籍を持つノーラン監督の熱い思いが垣間見えます。

後半は英国人でなくとも思わず目頭の熱くなるシーンも多くて、ノーラン監督の過去の作品にはない映画体験でした。

日本では今秋の公開になる『人生はシネマティック!』がダンケルク大撤退のプロパガンダ映画を作る開戦当時の映画界を描いているそうなので、どちらの企画が先なのかはわからないにしても両作品セットで観ておきたいと思います。

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2017.09.13

スパイはスーパーマンじゃない!?・・・イギリス映画『国際諜報局』



スパイものの傑作と名高いハリー・パーマーシリーズの第1弾です。実は初見です。廉価版DVDが出ていたことを知らなかったのです。

原作はハヤカワ文庫NVから出ているレン・デイトンの『イプクレス・ファイル』ですが、原作が一人称なので主人公には名前がありません。ハリー・パーマーはプロデューサーのハリー・サルツマンと主演のマイケル・ケインが付けたとのことですが、間抜けそうな名前を選んだのだそうです。サルツマンさん、自分の名前なのに(^^;

サー・マイケル・ケインと言えばナイトの称号を受けたイギリスの名優ですが、とにかく出演作を選ばないことで有名です。最近ではダークナイト三部作のアルフレッドが当たり役ですが、私は十代で観た『スウォーム』や『殺しのドレス』等のジャンル系での活躍が印象に残っています。どちらかと言えば怪優と思ってしまいます。

『イプクレス・ファイル』は元々レン・デイトンがフレミングのジェームズ・ボンドもののアンチテーゼとして書いたとのことで、『国際諜報局』も原作通り(以上)のいたって硬質の作りになっています。英国的なユーモアはあっても本質的に地味でハードボイルドな国際謀略ものです。

主人公のハリー・パーマー英国陸軍軍曹は占領時期のベルリンで物資横流しに手を染めて軍法会議にかけられたところを情報局のロス大佐にスカウトされます。

この映画では英国の知能とも言うべき科学者が連続失踪する事件の調査をロス大佐がダルビー少佐(ハマーお馴染みナイジェル・グリーン)に指示し、パーマーを少佐のチームにレンタルします。

マイケル・ケイン演じるパーマーは要領が良く、警察の友人を使ってあっという間に犯人にたどり着き、交渉したりするのですが、熱意というよりさっさと仕事を終わらせようとするやる気の無さの表れです。これが上手い。

007の荒唐無稽さと比べると、同じスパイものでもリアリズムなのですが、主人公の危機、意外な犯人、敵側の秘密兵器と、ケレン味も多く、辛気臭くならずに爽やかに全てを解決して、しかも続編もありそうだと思わせて終わるという、正しい娯楽映画のお手本のような作品です。

この時期プロデューサーのサルツマンはボンドとパーマーという対極のスパイ映画を並行して作り続けていたということは驚きです。しかも『国際諜報局』は音楽もジョン・バリーです。ある意味、ボンドとパーマーは英国スパイの両面を見せてくれていたのかもしれません。

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2017.09.12

ハマー・フィルムのミイラ第二弾は残念な結果・・・イギリス映画『怪奇ミイラ男』



ハマーフィルムのミイラ男シリーズ第2弾『怪奇ミイラ男』を何十年ぶりかで鑑賞しました。

テレビで一度観た限りでしたが、アメリカ人に階段落ちさせたり、エジプト人の頭を踏み潰したり、バカなヒロインを抱えて下水道を歩いたり等、ミイラの印象深いシーンは覚えていました。しかし、やはりあの頃の自分は子供だったのですね、謎の男アダムや、興行師キング氏なんてまったく記憶に残っていませんでした。

改めて観てわかったのは、この映画はハマーの中でも駄作の一つです。断言しますが、これと比べれば今夏の『ザ・マミー』なんて歴史的大傑作です。監督がマイケル・カレラスとクレジットされたのを観て、いやな予感がしたのですが、裏切られませんでしてた。

とにかく、登場人物達に魅力がありません。人物設定に深みがまるでないのです。脚本のヘンリー・ヤンガーなんてマイケルのペンネームですからね。みんなマイケルの所為です。

それに出演者自体ももうちょっと何とかならなかったのでしょうか。特に酷いのはヒロインです。美人女優さんを観ることもハマー映画の楽しみの一つなのに、この映画のヒロインであるアネット役のジェーン・ローランドは何で出演できたのか?!と不思議です。

ミイラ男も酷い。安上がりな出来で不恰好です。ハマーの前作『ミイラの幽霊』やユニバーサルのミイラを見倣って欲しかった。まだ次作『ミイラ怪人の呪い』のミイラの方が工夫されています(間違った方向に行ってるけど)。それでも、ラストの下水道を歩くミイラはななかなか絵になってました。

まあ、全体的に及第点とは言えませんが、日本初DVD化で、ハマーのミイラもの全4作がDVDで揃ったことが素直に嬉しいことだけは本当です。ハマーのファンにだけお薦めします。

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2017.09.10

名作になり損ねたヒッチコックの法廷劇・・・『パラダイン夫人の恋』



DVDで『パラダイン夫人の恋』を観ました。ヒッチコックが『汚名』と『ロープ』の間に監督した1947年作です。名作とは言えませんが、丁寧に作られている佳作ではあります。とにかく、なんだか惜しい映画です。

お話は英国が舞台です。盲目の元軍人パラダイン大佐が毒殺され、アリダ・ヴァリ演じる美貌の若妻が逮捕されます。その弁護を引き受けたのがグレゴリー・ペック演じる少壮気鋭のトニー・キーン弁護士。

トニーはしかし、パラダイン夫人の色香に迷って、連日刑務所を訪れます。そして恋に狂ってどんな手を使ってでも助けようとします。

トニーの妻ゲイは心を傷めますが、トニーはどんどん深入りして依頼人のパラダイン夫人がやめて欲しいと言うにも関わらず、大佐の世話人ラトゥールを犯人に仕立て上げようとしますが・・・。

前半は横恋慕で盲目となったトニーがパラダイン夫人のためと称して自分のための調査を延々と行うところを描き、後半は法廷劇になります。この法廷は実物そっくりのセットとのこと。見事です。

しかし、ここで致命的な欠点があります。トニー役のグレゴリー・ペックがイギリス人にも弁護士にも見えません(本人はイギリス系だし、後に『アラバマ物語』の弁護士役でアカデミー主演男優賞を取ったのは皮肉です)。

判事役がチャールズ・ロートン、同僚のベテラン弁護士役にチャールズ・コバーンと名優を配してますので、ペックが余計に浮いて見えます。

アリダ・ヴァリもなんだか能面のようです。他の女優さんは花がありません。ミスキャストの三乗のようです。

物の本によれば、プロデューサーのセルズニックが、自分の手でシナリオを改変したり、キャストを替えたりと傍若無人だったようなので、無理もないのかもしれません。ヒッチコックも好きな作品ではないようですが、観客にも伝染しますね。

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2017.09.08

珍しいロスト・ワールドもの・・・『失われた世界』(1950年アメリカ映画)



『ロスト・ワールド 2in1』というDVDを鑑賞しました。ロスト・ワールド2本立てとのことだったので、てっきり『失われた世界』の映画化である1925年版『ロスト・ワールド』と1960年のアーウィン・アレン版『失われた世界』の組み合わせだと思ったら、なんと25年版と1950年の『失われた世界(Two Lost Worlds)』との組み合わせでした。

50年版『失われた世界』はコナン・ドイルの原作とはまったく関係のない海洋冒険物語なのですが、『遊星よりの物体X』で怪物を演じたジェームズ・アーネスが主演しています。

ストーリーは、アメリカの貿易船ハミルトン・クイーン号が海賊船ファントム号に襲われ、船主のハミルトンが負傷します。船はオーストラリアに寄港してハミルトンは残ることになりました。

オーストラリアでは可愛い娘と恋仲になり、娘の婚約者といざこざが起こりますが、そうこうするうちに海賊達が陸に上がって襲撃してきました。共に海賊と戦うハミルトンと娘の婚約者。しかし、娘が海賊に拐われてハミルトン達は軍船で後を追います。

なかなか展開も早くて、当時の観客はハラハラしながら観たことでしょう。最後の最後で恐竜も出てきます。でも、これが例によって『紀元前百万年』の背ビレを貼り付けたワニと刺を貼り付けたトカゲをそのまま流用しているという、ある意味ファンにとってはとても嬉しい珍品的な作品なのでした。

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2017.09.07

怪奇映画+フィルム・ノワール・・・『夜の悪魔』



フィルム・ノワールには『呪いの血』のような悪女やファム・ファタル(運命の女)が付き物ですが、当時のユニバーサル怪奇映画の中でもフィルム・ノワール的な作りのものがあります。

ロン・チャニー主演の『夜の悪魔』などはまさにその典型で、怪奇映画の衣を纏ったフィルム・ノワールと言えます。なにしろ監督が後に『幻の女』や『らせん階段』、『裏切りの街角』と言ったフィルム・ノワールの名作を連発するロバート・シオドマクです。

お話は不死を望むアメリカ女がハンガリーで誘惑したドラキュラをアメリカに呼びます。呼ばれて嬉しそうにやって来たドラキュラは恋人の銃弾に倒れたアメリカ女をすかさず不死者にしてしまいます。ところが、それは女の策略で・・・。

このアメリカ女を演じるルイーズ・オールブリットンがフィルム・ノワールの悪女そのもの。自分中心で吸血鬼と結婚するわ、邪魔になったらお払い箱にするわ、恋人も引き込もうとするわ・・・。

フィルム・ノワールもクラシックな怪奇映画も共に当時の最大の娯楽。観客を楽しませることにかけては天才的です。

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2017.09.06

これぞフィルム・ノワール!・・・『呪いの血』



DVDで1946年のアメリカ映画『呪いの血』を鑑賞しました。

監督は『西部戦線異状なし』のルイス・マイルストン。主演ははヴァン・ヘフリン、バーバラ・スタンウイック、リザベス・スコットと来ればおわかりのように、フィルム・ノワールです。また、名優カーク・ダグラスのデビュー作でもあります。

友達のサムと逃げようとして、大嫌いな伯母(ジュディス・アンダーソン)を殺してしまったマーサは、家庭教師のオニールに引き止められ、殺人を見ていたオニールの息子ウォルターと共に強盗が伯母を殺して逃げたと嘘をつきます。

それから二十年近く経ち、各地を彷徨っていたサム(ヴァン・ヘフリン)が町に帰ってきたことで、伯母の遺産を相続したマーサ(バーバラ・スタンウイック)と、今ではマーサの夫となっている地方検事のウォルター(カーク・ダグラス)とは疑心暗鬼に陥ります。

マーサ夫婦とサムの関係に、サムが拾った刑務所帰りの女トニ(リザベス・スコット)が絡みます。

バーバラ・スタンウイックの最低な悪女ぶりは傑作『深夜の告白』の悪女役に勝るとも劣らない出来です。自分のことしか考えない彼女に翻弄されて付いていけなくなっているアル中のウォルター役をカーク・ダグラスが上手く演じています。

ヴァン・ヘフリンとリザベス・スコットの会話は正しいフィルム・ノワールとでも言えるような台詞の連続で痺れました。

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2017.09.04

ヒッチコックになろうとしたと見せかけて・・・『ホワット・ライズ・ビニース』



DVDでロバート・ゼメキス監督の2000年度作品『ホワット・ライズ・ビニース』を鑑賞しました。

恥ずかしながら、というか何というか、未見でした。ゼメキスは『コンタクト』が自分にとっての最高傑作です。それ以降の作品は一本も観ていませんでした。

導入部は完全にヒッチコックの『裏窓』です。なるほど、隣人の諍いを覗き見た妻が、精神的におかしくなっていると夫からも疑われるサスペンス・スリラーなのだな、と思って観ていたら、えっ?そうなの?お隣じゃなくて自宅の問題なの?しかも、ジャンル違ってません?

なんやかや言ってもサスペンス・スリラーで終わるゼメキスさんではありませんこら、覚悟して観る必要があります。ぼんやり観てたら一度心臓が停まりそうになりましたからね。

まあ、ちょっと強引過ぎるというか、この展開なら何でもありでしょう。ミシェル・ファイファーの熱演は良いけど、ハリソン・フォードはいただけません。上映時間も2時間なんて必要ないですね。冗長過ぎます。

最近の『フライト』とか『マリアンヌ』とかどうなんでしょうね?『ザ・ウォーク』なんて、高所恐怖症の私にしたら予告編で目を瞑ってゼメキスのバカヤロー!呪ってやる、と呟いていたほどですが。もちろん観てません。

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