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2016年8月の記事

2016.08.31

巧みな心理描写で描くサスペンス!自分は殺人者なのか?!・・・『ゆがんだ罠』(W・P・マッギヴァーン・作、創元推理文庫)

 創元推理文庫の『ゆがんだ罠』(The Crooked Frame)を読了しました。原作者はW・P・マッギヴァーン、訳者は中田耕治さん、初版は1960年です。私が読んだ一冊は73年の8版でした。

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 ウィリアム・P・マッギヴァーン(William Peter McGivern)の作品では社会派サスペンスの『虚栄の女』を先日読みましたが、『ゆがんだ罠』は主人公が容疑者にされて真犯人を探す羽目になる所謂「巻き込まれ」型のサスペンス小説です。原作は1952年に発行されています。

 空想科学小説雑誌の編集長、ウェッブ・ウィルスンは、アパートにもどったとき、自分のシャツにべっとり血がついていることに気がついた。指や手が血まみれになっていた。今夜、何があったのだろう? 恐怖と不安が彼をとらえた。泥酔していたあいだに、自分が誰かを殺したのかも知れない。しかし、何ひとつ記憶になかった……。ウェッブは自分が犯人でないとすれば誰なのか思いまどう。夜、孤独、雨、恐怖、もはや頼るべきものはただひとり、自分しかいなかった。マッギヴァーン、中期の傑作スリラー「ゆがんだ罠」は、読者を奇怪にゆがんだおそるべき罠にみちびく。

 主人公のウェッブは戦争中に誤って上官を背後から射殺した過去があり、その後ろめたさのために常に酒浸りとなっています。泥酔から醒めて血まみれの自分を見ても、自分がいったい誰かを殺したのか、殺していないのか、それさえも思い出せません。

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 物語の冒頭はウェッブが自分のアパートで血まみれになっていることに気付く場面です。とても絵になるシーンです。その後すぐにウェッブの回想に入り、この小説の半ばまでこの一週間の出来事が事細かに描写されます。

 しかも、その回想の中でもウェッブは酔って戦中の欧州戦線での上官殺しを頻繁に回想するため、ウェッブの二重の回想の中で読者もウェッブと同じ立場で何か起こったのかを考えることになります。

 孤独なウェッブに寄り添うように編集部員のアン・ステファノが登場してきます。彼女のウェッブに対する思いは同情なのか恋情なのかわかりにくいのですが、彼女が戦中に赤十字に志願してウェッブと同じ欧州戦線の戦場にいたことは、明確な表現はないものの、おそらくウェッブを救いたいと思う気持ちの根源なのでしょう。

 マッギヴァーンは登場人物達それぞれの巧みな心理描写で、ミステリー的な表現抜きでも読者をぐいぐい引っ張っていきます。

 詳細は不明なのですが、『ゆがんだ罠』は1973年に当時のNET(現テレビ朝日)系列で放送されていた毎日放送制作の『サスペンスシリーズ』の一本として「それは暗闇にはじまる」のタイトルでドラマ化され、仲代達也がウェッブに当たる役を演じたのだそうです。冒頭のシーンだけでも見てみたいものです。

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2016.08.05

怪物は暑いのに包帯だらけ!熱帯の島の恐怖譚!・・・『残酷の人獣』(フィリピン映画、1966年日本公開)

 ニューラインのDVD『残酷の人獣』(TERROR IS A MAN)を鑑賞しました。1966年の日本公開作です。これを初公開時に観た方はどう思われたのでしょう。

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 熱帯の島らしい雰囲気はよく出ています。孤島「ブラッド・アイランド」に流れ着いた難破船の船員が経験する恐怖!マッドサイエンティストが生んだ怪物!と言った趣向の映画です。つまりはウェルズの『モロー博士の島』と同じアイデアですね(だから「獣人」ではなくて「人獣」なのですね、きっと)。

SF小説の古典「モロー博士の島」をベースに、フィリピン映画界の巨匠エディ・ロメロがハリウッド俳優を招いて製作したモンスター映画。往年のユニバーサル・ホラーを彷彿とさせる秀作ながら、凝ったショック演出や奇怪な豹人間のメイクなどが話題を呼び、全米のドライブインシアターで大ヒットを記録。のちにホラー・ファンの喝采を浴びる“ブラッド・アイランド”シリーズの原点となった。(解説より)

 昔TVで何度も再放送した『ドラキュラの呪い』のドラキュラ役者フランシス・レデラーが、この映画の”マッドサイエンティスト”ジラード医師を演じます。その妻フランシスにはシドニー・ピンクの『S.F.第7惑星の謎』にも出演していたグレタ・ティッセン、難破した船員フィッツジェラルドはジョージ・パルの『地球最後の日』の主役を務めたリチャード・デアと、その手の映画で名の通った俳優さん達が揃って出演しているのが嬉しいところです。

 主役はアメリカ人なのですが実はフィリピン映画です。監督のエディ・ロメロはフィリピンでは有名監督とのことで、ちゃんとした映画も撮っているようです。でも、日本で有名なのはこの作品と後ほど作った『半獣要塞ドクター・ゴードン(ドクター・ゴードンの島)』が有名です。どちらも同じモチーフです。よほど好きなんでしょうね。

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 ラストに人獣が暴れますが全身包帯なのでまるでミイラ男です。暑かったでしょうね。それで暴れたのかな。

 ショック描写の前にはベルが鳴ることになっています。でも、きっと鳴ったのでしょうが、私には記憶がありません。居眠りしていたようです。最初から最後まで謎もショックもなく、映画に緊張感がありません。まるで熱帯の暑さにやられたようにとてもとても眠たくなりました。

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侵略宇宙人から惑星を救え!宇宙飛行士の冒険譚!・・・『幻の惑星』(アメリカ映画、日本未公開)

 フォワードのDVDで『幻の惑星』を鑑賞しました。1961年のアメリカ映画ですが日本では劇場未公開です。宇宙冒険もの映画で、謎の惑星に着陸した宇宙飛行士の活躍を描きます。

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地球の宇宙船が行方不明になる事故が多発したため、チャップマン少佐(ディーン・フレデリックス)は宇宙船ペガサスで捜索に出発する。異常な重力で強制着陸させられた惑星レトンには、科学文明が発達した小人の社会が存在した。惑星の大気のため小人になったチャップマン少佐は、隕石型宇宙船でレイトンに攻撃を仕掛ける侵略異星人ソラライトに、勇敢に立ち向かっていくが…。(ジャケットの内容紹介より)

 この惑星レトンはJAXAの「はやぶさ」が探査した小惑星イトカワのような形をした星です。なぜかこの星の住民は小さいのですが、当初は巨人だったチャップマン少佐までが大気の組成の影響か、するすると縮んでしまうのです。大きな宇宙服の中から這い出てくる少佐の姿はセンス・オブ・ワンダーを感じさせます。

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 監督はウィリアム・マーシャルですが、『吸血鬼ブラキュラ』の彼とは別人で、ジンジャー・ロジャースと一時期結婚していた人なのだそうです。美術はロバート・キノシタが担当しています。昨年100歳で亡くなったキノシタさんは『禁断の惑星』のロビーや『宇宙家族ロビンソン』のフライデー等ロボットデザイナーとして有名ですが、この映画のソラライト星人もデザインしたのでしょうか。

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 ちなみにこのソラライト星人のスーツ・アクターは若き日のリチャード・キールだったのだそうです。顔が見えないので本当かどうかわかりませんが。

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