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2016年6月の記事

2016.06.22

ベッドの隣に美女の死体が!?自分を追う破目に陥った新聞記者!・・・『シカゴの事件記者』(創元推理文庫、ジョナサン・ラティマー作)

 創元推理文庫のジョナサン・ラティマー作『シカゴの事件記者』を読みました。ラティマーの小説を読むのは『処刑6日前』に次いで二冊目です。

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 単発のサスペンスで拳銃マークにしてはハードボイルド味は薄いのですが、その分謎解き成分が濃いストーリー展開で、どんでん返しまであって最後の最後まで楽しめます。但し、どこまでシリアスなのか、それとも笑っていいのか、サムの弁護士トム・ニコルズが警察に捕まって取られる尋問調書など抱腹絶倒ものです。

泥酔した新聞記者サム・クレイは、ベッドの中で目をさました。それは自分の部屋ではなかったし、隣に眠っているのは全裸の血まみれの美女だった。その時けたたましく鳴りひびく電話のベル・・・・・・。殺人事件の巧妙な罠におちたサムは、皮肉なことにその事件を担当して取材することになった。凶悪犯として捜査の対象になっている自分を救うためにも、一刻も早く真犯人をつかめなければならない。シカゴの大新聞社を舞台に、命がけで奮闘する事件記者の生態をハードボイルド・タッチで描くラティマーの代表作。

 誰の部屋かもわからぬほどに泥酔して日曜朝に目覚めたら、 ベッドの隣に「死体」となった血まみれ美女を発見、さあどうする?!と、発端から考える間も与えられずグイグイ引っ張られるのですが、とにかく登場人物もイベントも多くて覚えきれないほどです。しかも人名表にも載っていない登場人物も多く出てきて、もはやこれって誰?と悩んでしまうほどでした。

 主人公サムの気持ちになれば、いつ自分に嫌疑が向けられて逮捕されるかわからないし、それなのに頼みとする弁護士や探偵は次々と警察のごやっかいになるし、真犯人につながると思われた証人は殺されてしまうし、もうずっと心臓が高鳴って表情も強張って、生きた心地がしなかったのではないかと思います。それでもラティマー描く主人公は『処刑6日前』のウェストランドもそうですが、かなり精神的にタフです。

 原題は"Sinners and Shrouds"(罪びとと屍衣)ですが、私にはどう言った意味なのか皆目わかりません。何かの引用なのでしょうか。アメリカ版のペーパーバック表紙は小説の一場面をそのまま描いています。サム・クレイは死体を置いて逃げ出す時にメイドをブランデーの壜で殴り倒してしまうのです。

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2016.06.19

前田通子の日本初全裸映画!?新東宝お得意の復讐サスペンス!・・・『女真珠王の復讐』@神保町シアター

 神保町シアターの特集上映「天知茂ーニヒルの美学」で新東宝の1956年公開作品『女真珠王の復讐』を鑑賞しました。初見でした。

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 この映画は主演の前田通子が日本映画史上初の全裸になったことが大きな話題になった、と物の本には書かれています。確かにロングショットの後ろ姿ではありますが、もしかして全裸かもしれないショットがあります。今となってはおとなしいものですが、当時は評判になったのでしょう。もちろんヌードの話題を除いても、この映画は復讐劇として面白い作品になっています。

社長殺害の共犯にされた美貌の女性秘書の驚愕の復讐劇。グラマー女優・前田が日本初のオール・ヌードを披露した、新東宝お得意のエロティック・サスペンス。孤島に流れ着いた前田を守り、復讐を助ける天知が好演をみせる。(チラシより)

 宇津井健演じる貿易会社の社員木崎は藤田進演じる専務の浅村の女秘書夏岐(前田通子)と恋仲で、結婚を一月後に控えています。しかし、悪い浅村は夏岐に横恋慕しています。そして、浅村の東南アジア出張に英語が堪能な夏岐が同行することになりました。出張を明日に控えた日、木崎は箱根で静養中の社長に書類を届けるように浅村から指示されます。ここまで書けば、タイトルと合わせてこの後何が起きるかほぼわかってしまいますね?

 そうです。社長は極悪人浅村に雇われた殺し屋野口(丹波哲郎!)にピストルで撃たれて殺されてしまいます。野口は殺人を木崎の仕業に見せかけて、木崎は洋行する夏岐を見送った埠頭で逮捕されてしまいます。洋上では正体を現した浅村が夏岐に迫ります。舳先まで追いつめられて海へ転落する夏岐。

 さて、肝心の天知茂はどこに出ているかと言うと、浅村に船から落とされて奇跡的に孤島に流れ着いた夏岐を誠心誠意守り助ける青年役です。新東宝的にはあくまで前田通子の全裸が売り物ですので、この島での展開(前田のヌードもこの島でのシーン)が丁寧に描かれます。

 夏岐が島で苦労しているその間に木崎には判決が下りて死刑が確定です。夏岐はいかに日本へ帰り、復讐を果たすのでしょうか?この映画では復讐劇はおまけのような扱いですが、ベテラン監督志村敏夫はきっちりと夏岐の復讐をサスペンスフルに描いて、面白いドラマを作って見せます。

 際物的な題名や宣伝方法で客を呼んで、きっちりした作りのエンタメ映画を見せてくれる、まさに新東宝らしい一本です。

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2016.06.15

手に汗握る上質なサスペンス!魅力的な富豪令嬢!・・・『あでやかな標的』(創元推理文庫、ベン・ベンスン作)

 創元推理文庫の『あでやかな標的』を読みました。ベン・ベンスン作の警察小説でマークは拳銃、マサチューセッツ州警察のウェイド・パリス警視を主人公としたシリーズの一冊です。

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 翻訳は稲葉明雄さんで、1962年に稲葉由紀名義で出されていた作品の再版です。

マサチュセッツ州ウェリントン市の下水道から、サンドイッチの立売店を経営する老人が無残な他殺体となって発見された。そして、死体の処分を目撃した富豪の令嬢は、ギャングの一団から標的として狙われている。検事局の要請で乗りこんできた州警察のパリス警視は、ギャング団の背後に糸をひく市政の大物の正体をつきとめるべく、岬の突端に殺人鬼を待ちかまえて罠をはった。パリスものの中でも抜群のサスペンスを持つ警察小説(内容紹介より)

 表題は殺人現場を目撃した富豪令嬢が殺人者一味から狙われていることを指しています。原題は"TARGET IN TAFFETA"(薄絹を着た標的)で同じ意味です。

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 この富豪令嬢ジェーン・モンカームは二十二歳の若い女性です。警察官であるパリスにとっては保護すべき対象なのですが、同時にファム・ファタル的な存在です。富豪の両親を事故(これもあるいは?と思わせますが)で失い、莫大な遺産を相続しながらも自分のアイデンティティに悩む、極めて魅力的な存在として思い入れたっぷりに描かれています。

彼女は声をあげて笑うと、そばへ近づいてきて、彼に腕をからませた。「きょうは一日じゅう、ほとんどお顔を見なかったわ。どこへいってらしたの?」

 方やパリスは三十五になった分別のある警察官。ジェーンの子供っぽい誘惑にもパリスは耐えます。表面上は若い娘を軽くやり過ごしているようにふるまいますが、パリスも独身の男盛りなので必死に我慢しています。その胸の内が綿々と綴られるのがこの小説の魅力の一つでもあります。

二人のあいだには、年齢の差だけでなく、あらゆる点で、あまりにも懸隔がありすぎる。いまのうちに、きれいさっぱりと諦めたほうがいい。いまが、そのいい機会だ。で、彼は苦しそうな声でいった。「ぼくは警察官の仕事をやる身です。きたならしい仕事ですよ、あなたのお友だちにも変人あつかいされるでしょう。珍しさなんか、いずれ消しとんでしまうものですよ」彼女の眼がうるんできた。彼女は怒ったように、その眼をこすって、「ひどいことをおっしゃるのね」

 ストーリーは単純ですが、敵がどう襲ってくるか、誰が真の黒幕か、パリスはどう迎え撃つのか、手に汗握るような上質なサスペンスで読者を引っ張ります。

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2016.06.11

誘拐犯を追い詰める大捜査線!時系列で描くサスペンス!・・・『非常線』(創元推理文庫、ホイット・マスタスン・作)

 創元推理文庫でホイット・マスタスンの『非常線』(鷺村達也・訳)を読了しました。 カバー・イラストは浜田稔さんでこの版は1972年の再版でした。マークは拳銃です。

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 元々は東京創元社が1958年に出版した「クライム・クラブ」の第6巻でした。米国で出版されたのが1955年だったので、ほぼ新作での紹介だったことになります。

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 文庫には1962年に入っていますが、当初は猫マークでした。

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 この小説は終始サスペンスフルな展開で犯人を追い詰める過程を描いています。誘拐犯の行動は犯人視点で読者に知らされますので、娘が無事かどうかは、章も小見出しも『24』のように時刻表示になっていて、原題の"All Through the Night"(今は改題されて"A Cry In The Night"になっています )そのままに、事件が未明に起きて明け方には解決するお話です。

深夜の公園で女の子を誘拐して逃げまわる中年の色情狂! 警察官として、また父親として、娘を無事に取り戻そうとあせる剛直一徹の警部。それに応じて、たちまち全市に張りめぐらされる捜査網…………これらが織りなす張りつめた不安と緊張が時計の針の動きとともに、息苦しいまでに描き出される。快調ホイット・マスタスンの、手に汗にぎる警察小説!(内容紹介より)

 性犯罪歴のある男が車の中のカップルを脅し、男性を殴り倒して女性を誘拐します。実はこの女性は市警の捜査部長の娘だったのです。捜査部長は石頭とあだ名されていますが、さすがに自分の娘を誘拐されては冷静ではいられません。この突発的な誘拐事件に対して市警を挙げての大捜索が始まります。

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 ホイット・マスタスンはエラリー・クイーンと同じく二人の作者による合作ペンネームです。ビル・ミラーとロバート・ウェイドの合作で、二人はウェイド・ミラーというペンネームも使っていました。創元推理文庫には『ハンマーを持つ人狼』という作品も入っています。そちらの方は最近まで版を重ねていたようですが、『非常線』は残念ながら絶版のままです。新訳での再発売を期待したいものです。

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2016.06.02

読むフィルム・ノワール!刑事くずれの生きざま!・・・『深夜特捜隊』(創元推理文庫、デビッド・グーディス・作、井上一夫・訳)

 創元推理文庫でデビッド・グーディスの『深夜特捜隊』を読了しました。もちろん古書で、初期カバー版です。この赤地に拳銃のカバー・イラストは秀逸です。思わず手に取り、買いたくなるカバーです。

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 グーディスの小説は『ピアニストを撃て』がフランスで映画化もされて有名です。シャルル・アズナブールが孤独なピアノ弾きを演じていました。

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 キーワードを並べてみると、虚無的な主人公、悪徳警官、ファム・ファタル、酒、カード、金、銃、車、暴力、独白、嘘、裏切り、ギャング、制裁、レイプ、復讐…そして正義。この小説にノワール要素は全て揃っています。

大都会の癌、スラムに君臨するやくざのボスにとっては、たかり、暴行が横行し、子供がねずみにかじられたりする町が、彼のドル箱だった。汚職で首になった警官コーリーは腕を買われてスラムの帝王の用心棒になったが、それと同時に、ギャングどもと対決する警察愚連隊、深夜特捜班からも誘いの手が伸びていた。金と女と警官バッジとのなかから、なにかを選べなければならないコーリーのゆくてには、暴力と拳銃の雨が降る。痛快きわまるアクション・ハードボイルド!(内容紹介より)

 まさに読むフィルム・ノワールです。『深夜特捜隊』は『ピアニストを撃て』よりももっと黒く、それでいて読後感は爽やかです。
 

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 それにしても、どうしてカバーイラストを変更してしまったのでしょうか?オリジナルの赤地に拳銃の素晴らしいカバーと比べて、あまりにもひどいカバーだと思いませんか?買う気にさせないカバーのトップ10に入りそうです。

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