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2016.05.10

社交界の花形が殺された!暴露日記はどこに!?・・・『虚栄の女』(創元推理文庫、W.P.マッギヴァーン作)

 創元推理文庫の『虚栄の女』を読了しました。W.P.マッギヴァーン作、中田耕治氏訳の初版です。拳銃マークで軽ハードボイルドなのですが、意外な犯人の謎解きもあって社会派ミステリーとしても楽しめる作品でした。

Kyoeinoonna

 戦時中に不正な手段で巨富を得た実業家ライアダンは、当時、社交界の花形だった美貌の女性メイが出版しようとしている日記におびやかされていた。彼女の日記には軍部や政界の上層部、シカゴ暗黒街のボス、財閥などの動きが克明に記されているという話だった。ところが、その問題の女性メイが殺害され、日記が忽然と消失するという事件が勃発した。PR界きっての敏腕をうたわれるジェイクはライアダンから調査を依頼されて行動を開始する。虚栄の女メイの死を背景に組織と人間のジレンマのなかで犯人に肉迫する孤独な男。マッギヴァーンの会心作!

 邦題の『虚栄の女』は社交界の花だったメイ・ラヴァルを指しています。元々ショー・ガールだったこの女性はパトロンと結婚して財を得ます。そして社交界に君臨すると「戦時中、光彩陸離たる名流夫人としての、はなやかな名声は絶頂に達し」て「数百万ドルにおよぶ物資の売買の交渉で、シカゴに出張してくる重要な人物をもてなす非公式のホステスだったし、物資配給の優先権、割当、契約、物資調達といった戦争に従事している人々にとっては、女性のフライデイだった」メイが当時の様子を克明に綴った日記を出版するというのですから、大騒ぎになります。案の定メイは何者かに殺害されてしまいます。

 この小説では警察官や私立探偵ではなく、広告代理店に勤める主人公ジェイク・ハリスンが探偵役を果たします。クライアントの大企業家ライアダンが戦時中にメイと密接な関係だったからです。

 この時代の米国における広告代理店がどれほどの規模でどのような役割を果たしていたか、私には不明なのですが、よく言われるように米国の広告代理店はまさにクライアントである企業の「代理」であって、日本のようにメディアブローカー(主な収入源がメディアからのコミッション)としての役割よりも、より企業の意向に沿ったPR活動を行う傾向にあったことは確かでしょうから、この小説の中のノーブル社のようにクライアントを窮地から救うためには様々な策を弄して活動していたのかもしれません。

 また、作中に上院議員のハムステッドが作った戦時不正利得の追及をする委員会が出てきますが、この類の委員会が本当にあったのかどうかも不明です。この小説が出版された1950年は東西冷戦拡大の時期で、中ソは蜜月となり、朝鮮戦争が勃発しています。この後の米議会は悪名高いマッカーシーが登場して赤狩りを進めます。そんな時代なので、第二次大戦中の軍需産業の不正利得追及が真剣に行われていたとは思えませんから、おそらくは全く架空のお話なのでしょう。

JP

 原題の"Very cold for May"(メイにはとても冷たい)は被害者の名「メイ」と「五月」をかけてあるのかな?と思いましたが、この小説の中では(何月かは書かれていませんが)積もるほどの雪が降っているので、いくらシカゴが寒いとは言え、さすがに季節が5月ということではないようです。

USA

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