« 異邦人と殺人犯の心の交流!カミュの自伝的小説を映画化!…『涙するまで、生きる』(仏=西合作) | トップページ | 前半のサスペンスは異常なほど!記憶喪失ものの佳作!…『黒いカーテン』(ウィリアム・アイリッシュ・作、宇野利泰・訳、創元推理文庫) »

2016.05.20

死刑囚デッド・エンドものの嚆矢!?『幻の女』以前の名作ハードボイルド・ミステリ!…『処刑6日前』(ジョナサン・ラティマー・作、井上一夫・訳、創元推理文庫)

 創元推理文庫で『処刑6日前』を読みました。ジョナサン・ラティマーの作、井上一夫さん訳の1966年4版です。丁度50年前の本を今読めるのは幸せです。もっとも、原作"Headed for a Hearse"(霊柩車に向かって)が発行されたのは1935年とのことなので、80年近くも前の作品になります。

Shokei6kamae

別居中の妻を殺した罪で処刑を一週間後にひかえた男が死刑囚監房のなかで絶望から立ちあがった。自分でも自分以外の犯人が考えられない密室殺人の真犯人を獄中から突きとめようというのだ。弁護士、私立探偵、友人などの協力で、一週間たらずの日限をきられた必死の再捜査が開始する。一日一時間が電気椅子へ近づいていく焦燥のうちに、有力な証拠や証人が、謎の黒い手によって、つぎつぎと消されていく。この絶望的状況から真犯人を割り出すみごとさは、まさにハードボイルド派の雄編の名に恥じない!(内容紹介より)

 冬のシカゴ。処刑を6日後に控えた死刑囚三人の描写から始まります。 主人公の死刑囚ウェストランドは妻殺しの罪で電気椅子に座る運命となりました。彼は自分が無罪であることを自覚しているにも関わらず、その運命を甘受しようとしていたのです。しかし、二週間前に届いた一通の手紙を読んでウェストランドは考えを変え、運命に立ち向かおうとします。

JP

 ウェストランドは株式仲買人で裕福です。刑務所長を買収し、刑事弁護士の第一人者を雇います。そこから死刑直前までの短い時間で何とか主人公を救おうとする取り組みが始まります。刑務所長の部屋に関係者が一同に会して行われる作戦会議の描写はとても面白くて興味深いです。

 主人公に雇われた名うての刑事弁護士フィンクルシュタインと、彼が雇った私立探偵二人組クレーンとウィリアムズのコンビがこの小説の探偵役ですが、NYから来た探偵達はとにかく荒っぽいです。酒に女に喧嘩と、典型的なハードボイルドの登場人物です。

USA

 死刑囚の主人公にとって救いの神と頼む刑事弁護士フィンクルシュタインも、捜査途中で知り合った女と好い仲になるという展開です。緊迫感のないことこの上なく、本気で主人公を救う気があるのだろうかと読んでいる方が心配になります。それもこれも読者をやきもきさせる手でしょう。

 処刑当日、一堂に介して真犯人を名指しするラストは、この小説が単なるハードボイルドではなく、ミステリーとしての面白さを十分備えたものであることを認識させてくれます。この小説はハードボイルドと謎解き要素の組み合わせがとても魅力的です。意外な真犯人、密室トリックも楽しめます。

 この作品と同じ処刑時刻の迫った死刑囚を救うために真犯人を追うサスペンスである名作『幻の女』は、この小説がなければ生まれなかったでしょう。

USA

注:"JP"と記載された写真はAmazon..co.jp(日本)に、"UK"と記載された写真はAmazon..co.uk(英国)に、"USA"と記載された写真はAmazon.com(米国)にリンクしていますので、ご注意ください。

|

« 異邦人と殺人犯の心の交流!カミュの自伝的小説を映画化!…『涙するまで、生きる』(仏=西合作) | トップページ | 前半のサスペンスは異常なほど!記憶喪失ものの佳作!…『黒いカーテン』(ウィリアム・アイリッシュ・作、宇野利泰・訳、創元推理文庫) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/49025/63686989

この記事へのトラックバック一覧です: 死刑囚デッド・エンドものの嚆矢!?『幻の女』以前の名作ハードボイルド・ミステリ!…『処刑6日前』(ジョナサン・ラティマー・作、井上一夫・訳、創元推理文庫):

« 異邦人と殺人犯の心の交流!カミュの自伝的小説を映画化!…『涙するまで、生きる』(仏=西合作) | トップページ | 前半のサスペンスは異常なほど!記憶喪失ものの佳作!…『黒いカーテン』(ウィリアム・アイリッシュ・作、宇野利泰・訳、創元推理文庫) »