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2016年2月の記事

2016.02.14

丸根賛太郎祭でドタバタコメディ+オペレッタ時代劇の珍品鑑賞!戦後日本の高揚感を伝える歴史的作品!・・・『エンタツちょび髭漫遊記』(東映、1952年)@シネマノヴェチェント

 西横浜/戸部のシネマノヴェチェントで観た「丸根賛太郎祭」時代劇二本立ての二本目は『天下の豪傑(エンタツちょび髭漫遊記 改題)』で、1952年の東映配給作品です。タイトル通り、コメディアンである横山エンタツが主演する時代コメディです。

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 この年は朝鮮戦争の真っ只中、日本は朝鮮特需に沸いていた時期です。前年には片面講和のサンフランシスコ条約が結ばれ、日本は自由主義陣営の一員として独立を果たしています。この映画もそんな大きく歴史が動く時期の時事ネタを取り入れて笑いを取っています。

 ストーリーはたわいのないものです。家老の娘に付文してお家追放になったエンタツ扮するちょび髭侍が天下の豪傑になろうと諸国を周りますが、その道中にくり広げられる大騒ぎを描きます。

、剣豪無敵尊者に弟子入りをしようとして、入門テストであっけなく無敵尊者を倒してしまうちょび髭侍。なんなく極意の一巻を手に入れます。この無敵尊者は森繁久彌が老人メイクで演じています。

 無敵尊者は亡くなりますが、尊者の若い女房魔葛は無敵尊者の仇を討って巻物を取り返さんとちょび髭侍を追いかけます。魔葛を丹下キヨ子が演じるのですが、男装姿でかなり凛々しいです。

 それからは漫遊するちょび髭侍と追いかける魔葛を交互に映し出します。色仕掛けで騙されてちょび髭侍が身包み剥がれたり、なぜか峠の山賊大蛇丸(岸井明)一味がちょび髭侍が持っているという「原子力」に恐れをなして解散宣言をしたり、旅の途中で青年剣士(大泉滉)に乗り移った無敵尊者の霊が魔葛にちょっかいを出したり、ドタバタが続きます。

 大蛇丸が部下を閲兵するシーンがありますが、これがまたすごい人数が分列行進するモブシーンになっており、一見の価値があります。1952年は自衛隊の前身である保安隊が組織された年ですので、それを意識したギャグなのでしょう。

 この映画のクライマックスは身投げしようとする娘を助けたちょび髭侍が、娘から話を聞いて悪代官(吉田義夫)、悪親分(堀正夫)と偽の生き神様一派(坊屋三郎、益田喜頓)の悪企みを粉砕するために生き仏様に化けて対抗することになります。ここで生き神様一派の益田喜頓が歌う生き仏様懐柔の歌が愉快です。とにかく何でもありのコメディ時代劇になっています。

 この映画のすごいところは、只のコメディではなく、岸井明の大蛇丸が登場する辺りからオペレッタになってしまうところです。元あきれたぼういずの二人に加えて当時の流行歌手である久保幸江、美ち奴、藤島桓夫が登場する後半はさながら歌合戦状態です。

 こういう何も考えずに無条件で楽しめる映画も楽しいです。今回は残念ながらフィルムの状態が極端に悪く、エンドマーク寸前で上映が出来なくなったのが心残りです。

(追記)シネマノヴェチェントでは『エンタツちょび髭漫遊記』の修復作業を行って、その際に編集がおかしくて場面が前後していた箇所もつなぎ直したとのことです。修復された『天下の豪傑』、もう一度観たいと思います。

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ヒロイン沢井桂子さんの撮影秘話トークを堪能!円谷英二実質最後のゴジラは宇宙侵略SF+怪獣対戦映画の意欲作!・・・『怪獣大戦争』(東宝、1965年)@シネマノヴェチェント

 西横浜/戸部のシネマノヴェチェントで『怪獣大戦争』を鑑賞しました。この映画は私が初めて劇場で観たゴジラ映画で、とても思い入れがあります。本当はキングギドラがデビューした前年の『三大怪獣地球最大の決戦』を観に連れて行ってもらいたかったのですが、親の都合でダメだったので、『怪獣大戦争』で初めて動いているキングギドラを観ることができ、とても興奮したことを覚えています。

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 『怪獣大戦争』は怪獣映画ではありますが、ベースとなるストーリーは『地球防衛軍』や『宇宙大戦争』と同様、宇宙人による地球侵略SF映画です。そのため、『怪獣大戦争』は前作を受けた形で、キングギドラ、ゴジラ、ラドンが引き続き登場しますが、本筋にはあまり絡まず出番は極端に少なくなっています。

 キングギドラは前作では金星を滅ぼして次に地球を狙ってやってくる自立的な宇宙超怪獣でしたが、今作では『地球防衛軍』のモゲラのように宇宙人の侵略の尖兵にしか過ぎません。中野監督によればSF映画が当たらない日本で、どうSFを見せるかを考えて作られたとのことです。宇宙人にゴジラを絡ませても破綻せず、観客が納得できる完成度の高い映画になっているのは、やはり脚本の関沢新一さんのお手柄なのだろうと思います。

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 この作品は何と言っても地球侵略を狙うX星人のユニークさが売り物です。X星人は最初から領土と女性の要求を突きつけてきたミステリアンよりも相当陰湿な宇宙人で、キングギドラ撃退のためにゴジラとラドンを借してくれ、その代わりに癌の特効薬処方を教えるから、と当初は表面上Win-Winの関係を築こうとするように見せかけます。当然、その裏では地球を乗っ取る陰謀を着々と進めています。

 『宇宙大戦争』の敵ナタール人は直接の意思疎通が出来る相手ではありませんでしたが、『怪獣大戦争』のX星人は『地球防衛軍』のミステリアンのように一見コミュニケーションが取れる相手のように思えます。そのため宥和か抗戦か、地球人としては大いに悩むところです。但し、X星人は自動計算機を盲目的に信奉しておりコンピューターが出した指示の通りに動きますから、X星人と真のコミュニケーションを取ることは地球人にとってはかなり難しいものと思えます。

 『地球防衛軍』ではミステリアンの統領を演じた土屋嘉男さんが再登場し、X星人のトップである「統制官」を楽しそうに演じています。地球基地指令を演じた田武謙三さんも印象に残ります。初登場シーンではなんと日焼サロンのように光線を浴びています。背中にはお灸のようなものも着いています。これはX星人の体が弱っていることを観客に見せているのでしょうか?それともX星人の素顔では青白すぎて地球人に化けられないないから変装用なのでしょうか?

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 X星人のユニフォームも初公開当時としては相当ぶっ飛んだもので、子供心に強烈に刷り込まれてしまい、ずっと忘れることができませんでした。そのため『ゴジラ FINAL WARS』のX星人には大いに失望したものです。

 上映後にはこの映画のヒロインである沢井桂子さんと、特撮のチーフ助監督だった中野昭慶監督によるトークショーとサイン会・撮影会が行われました。

 沢井さんは物心ついたころから女優になると決めていたそうです。第4期オール東宝ニュータレントの一員として1964年にデビューされていますが、オール東宝ニュータレントは映画のスター候補であるニューフェイスと違って、映画のみならず舞台にもテレビにも活躍する役者さんとして幅広く期待される若手という位置づけだったのだそうです。

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 沢井さんの芸名の桂子は撮影所の重役が大先輩の小林桂樹さんに沢井さんの芸名を相談したところ、ご自分の名前からから一字取って付けて頂けたとのことです。

 新人時代の『海の若大将』は古澤憲吾監督が怖かったとのことです。古澤監督からは泳げて潜れるようにもしておいてくれと撮影前に言われたので絶対無理と思ったのですが、それは監督としての思いを伝えたものらしく、実際の撮影は吹き替えを使ったのだそうです。

 『海の若大将』の撮影では、当時の水着はパットも入っていないので恥ずかしがっていたら、加山さんがバスタオルを背中に掛けとけばと言ってくれたとのこと。後に本多監督の『お嫁においで』でも自信がないのに水着を着せられて恥ずかしかったとのことでした。

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 『お嫁においで』は沢井さんの実質的な初主演作ですが、『フランケンシュタイン対地底怪獣』、『怪獣大戦争』と二本続けて本多監督の映画に出たので、そのつながりで呼ばれたのだと思うとのことです。本多監督には今までより活発な役だからと言われたとのこと。本多監督はやさしい方で、当時は次の映画も本多さんで良かったと思っていたのだそうです。

 『怪獣大戦争』の共演者では、ニック・アダムスさんは変な日本語を覚えてきては、皆を笑わせていたとのこと。土屋嘉男さんは円盤や宇宙人のお話を熱心にされていた、貴女も是非信じなさいと言われたそうです。田崎潤さんは普段は優しいけれどお酒が入ると豪放磊落で大声で話すので、遠くにいてもまた田崎さんが話してるなとわかったとのことです。ロケ先の宿では天気祭と称して毎晩皆でお酒を飲んでいたそうです。

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 中野監督は『怪獣大戦争』では怪獣の出番こそ少ないが、民家を潰すゴジラの足などは大きいものを作ってクレーンに着けて撮影したり、キングギドラのピアノ線も増やして滑らかな動きが出来るようにしたり、新しい試みもしていて前作と比べて特撮カットが少ないと思ったことはないそうです。

 円谷英二特技監督はこの映画が実質的に最後のゴジラ映画の特技監督(次作『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』では有川貞昌監督が特技監督補名目で演出を代行)なのですが、ゴジラのシェーにしても、コントロールが解けて痙攣するところでも、とにかくこの映画では怪獣達の演技を重厚なものではなくコミカルなものに変化させたとのこと。客層を低年齢層に広げる意図があったとのことです。当時円谷監督は64歳、この映画で第20回 (1966年度)の「日本映画技術賞(現・映像技術賞)」を受賞しています。

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 ゴジラのシェーは円谷さんが撮影所長に言われて取り入れたそうですが、手がどっちにすれば正しいのかわからなかったので、中に入った中島春雄さんは両方やっているのだそうです。

 沢井さんと中野監督のトークは素晴らしく、本編と特撮の両方の裏話が聞けましたので、とても楽しく参考になりました。本当は沢井さんの相手役である久保さんもゲストとして来場される予定だったのですが、残念ながら体調不良でお目見えにならず、その代わりに全員に久保さんのサイン色紙が配付されました。沢井さんはからは全員にバレンタインデーのチョコを頂きました。とても嬉しいプレゼントでした。

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注:"JP"と記載された写真はAmazon..co.jp(日本)に、"UK"と記載された写真はAmazon..co.uk(英国)に、"USA"と記載された写真はAmazon.com(米国)にリンクしていますので、ご注意ください。

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戦前時代劇の一つの頂点!丸根賛太郎初監督作!・・・『春秋一刀流』(日活京都、1939年)@シネマノヴェチェント

 西横浜/戸部のシネマノヴェチェントで丸根賛太郎監督の時代劇二本立てを鑑賞しました。この上映はシネマノヴェチェントの開館1周年記念番組「丸根賛太郎祭」とのことです。

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 一本目の『春秋一刀流』は1939年日活京都撮影所制作の時代劇で、丸根賛太郎の監督第一作です。丸根が書いた脚本を主役の片岡千恵蔵が気に入って、自らの主演で丸根に撮らせるように後押しをしたとのことです。有名な千恵蔵主演の『鴛鴦歌合戦』も同年の日活京都作品です。

 講談や芝居でお馴染みの天保水滸伝をモチーフにしていますので、平手造酒、笹川の繁蔵や飯岡の助五郎等々お馴染みの歴史的人物が登場しますが、ドラマとしての個々のエピソードは丸根監督のオリジナルです。
 
 冒頭、長閑な空のカットから激しいやくざ同士の大喧嘩のシーンに移ります。今ではとても撮れないと思われる大モブシーンです。戦いのさなか、カメラは地面に突き刺された日本の刀を写します。その傍らに二人の男が座って話しています。

 千葉道場を破門されて浪々の身となった平手造酒はやくざの用心棒として雇われていますが、喧嘩の最中に敵方の用心棒である弟弟子の巌流とサボって日当の話をしているのです。片岡千恵蔵が平手造酒を原建作が巌流を演じています。

 割の悪い今の雇い主に愛想を尽かして喧嘩から逃げ出した二人は、橋の上で揉めている男女を見つけ、平手が男を殴りますが、実はその男は橋から身投げしようとする若い娘を止めえいたのでした。その重兵衛という人情に厚い男を志村喬が好演しています。三人はもっと日当を出してもらえそうな雇い先を探し、宿の隣室の客の伝で笹川の繁蔵親分(沢村国太郎)の用心棒となります。

 平手は喧嘩毎に十両という日当の契約を繁蔵と結びます。高い値段に見合って、とにかく平手造酒は強い強い。平手が参加した喧嘩は百戦百勝で笹川の繁蔵は破竹の勢いです。

 こうして前半だけ観ていると痛快ユーモア時代劇で、平手もニヒルにならずに明朗快活ですが、平手の病の発覚がターニングポイントとなって、平手が喧嘩に参加しないようになると、徐々に雲行きが怪しくなってきます。

 1939年は昭和14年。二年前に盧溝橋事件に端を発した日中戦争が勃発し、この時期は泥沼化して長期化必至となっていました。前年には国家総動員法が制定され、日本はもはや後戻りできない道を歩みだしており、二年後には太平洋を挟んだ戦争が始まります。この映画の話の流れはこの時代の雰囲気に妙に合致しています。

 道場を開こうと三人の浪人達が前向きに誓い合った途端に次々と不幸が襲い掛かります。平手が病に倒れ、喧嘩に加勢できなくなります。そして巌流が足を怪我し、それが前触れだったのでしょうか、とうとう喧嘩の犠牲になります。そして唯一人残った用心棒の重兵衛も鉄砲により命を落としてしまいます。

 用心棒を欠いた笹川の繁蔵は、飯岡の助五郎に縄張りを荒され、じり貧となっています。繁蔵の妹お勢以(轟夕起子)は病に苦しむ平手を東京で養生させようとしますが、平手は断ります。繁蔵はとうとう負け戦を覚悟で最後の喧嘩に挑もうとします。それに気づいた平手は病を押して後を追います。

 ラストは衝撃的です。まるでフィルム・ノワールのようなメタな設定です。当時は理解できなかった観客もいたのではないでしょうか。

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2016.02.13

裕次郎の熱血サラリーマン!芦川いづみさんの明朗OL!・・・『青年の椅子』(日活、1962年)@神保町シアター

 神保町シアターの「恋する女優 芦川いづみ アンコール」も三週目に入りました。今週は裕次郎と芦川さんコンビの源氏鶏太原作サラリーマンもの三本『喧嘩太郎』、『堂々たる人生』、『青年の椅子』が固まって上映されます。いずれも相変わらずすごい人気で初日の今日は朝から完売続きでしたが、なんとか『青年の椅子』を観ることができました。

若手社員(石原)は、会社乗っ取りを企む一派が、信頼する営業部長の失脚を狙っていることを知り・・・。熱血サラリーマン裕次郎が仕事に恋に大奮闘。芦川は恋のバトルをくり広げるOL役で、源氏鶏太原作もので見せる快活さも魅力的。(神保町シアター特集チラシより)

 この映画の裕次郎は九州から転勤してきた日東電機営業部の熱血サラリーマン高坂虎彦を演じています。彼は純朴ですが売られた喧嘩は必ず買うという熱い男。虎彦が社内外の陰謀に敢然と立ち向かって正義を貫くというサラリーマンにとっては夢のような、典型的な勧善懲悪サラリーマンものです。

 基本的に裕次郎の映画なので、芦川さんは出ずっぱりという訳ではありませんが重要な役どころです。芦川さんは営業部の和文タイピスト(パソコンどころかワープロもなかった当時は専門の和文タイピストを雇用していた会社も多かったのでしょう)井関十三子の役で、彼女は藤村有弘演じる同僚の大崎と婚約しています。

 この大崎がいやらしい奴で、次期重役候補の滝沢修演じる総務部長に取り入って腰巾着になっています。この二人に大手得意先矢部商会の専務・田崎(高橋昌也)が組んで、宇野重吉演じる真面目な日東電機営業部長を追い出そうとあの手この手の陰謀を張り巡らせます。

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 虎彦は営業部長を守ろうと奔走するのですが、味方となるのがもう一つのお得意さんの畑田社長。この酒乱で豪放磊落な社長を東野英治郎が楽しそうに演じています。そして虎彦、畑田社長に矢部商会の反専務派若手社員木瀬(山田吾一)が加わり、スクラムを組んで悪玉達の陰謀に立ち向かいます。

 芦川さん演じる十三子はお得意様接待旅行での大崎の態度に失望して虎彦に乗り換えるのですが、大崎への婚約解消通知が愉快で、彼女は得意の和文タイプでまるで社内文書のように打って渡します。この映画の当時芦川さんは27歳、前年には名作『あいつと私』に主演し、15年間の女優人生の中では一番脂の乗り切った時期です。

 『青年の椅子』は『喧嘩太郎』の松浦武郎が脚本を担当し、『美しい庵主さん』の西川克己監督が撮っています。公開当時はきっとカラーのワイド画面でくり広げられる裕次郎といづみの溌剌とした活躍を若者達が共感を持って楽しんだことでしょう。VHSは出ていましたが、未だDVD化はされていませんので、劇場で観るのは貴重な機会でした。

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2016.02.11

上質のサスペンスと人間ドラマ!フィルム・ノワールの二つの顔、『出獄』と『裏切りの街角』!・・・「フィルム・ノワール傑作選」@シネマノヴェチェント

 シネマノヴェチェントの「フィルム・ノワール傑作選」で鑑賞した残り二本は、若き日のジェームズ・スチュアートが好演する『出獄』、それに箕輪館長一押しのパート・ランカスター主演、ロバート・シオドマク監督の『裏切りの街角』です。

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 『出獄』(Call Northside 777)は日本では1949年に公開された実話ベースのお話で20世紀フォックスの映画です。冤罪で終身刑となっている男を新聞記者が助けようと奮闘努力します。ジェームズ・マクガイア原作となっていますが、この人がシカゴ・タイムズの記者なのです。

 はったり的な虚構と大胆な省略、斜に構えた主人公と破滅型ヒロインが典型的なフィルム・ノワールだとすれば、この映画はその定義とは極めてかけ離れた、セミ・ドキュメンタリータッチの良心的人間ドラマで、真実を暴き出そうとする新聞記者の行動と心の動きを丁寧に描き出して感動を呼びます。

 事件は禁酒法時代の1932年、シカゴのダウンタウンで起こりました。ポーランド移民が多く住む街の「スピーク・イージー(酒密売店)」に強盗が入り、見回りのバンディ巡査が射殺されたのです。容疑者として二人のポーランド系の男が裁判に掛けられ、強盗に入られた店の女主人の証言により有罪となり、警官殺しの罪で懲役99年の刑(実質的な無期懲役)が下されました。

 それから12年が経ち、1944年になってからシカゴ・タイムズに一つの新聞広告が出ます。それはバンディ巡査殺しに関する真犯人の情報を募集するもので、5千ドルの賞金が付いていました。シカゴ・タイムズの編集長ケリー(リー・J・コップ)は敏腕記者のマクニールにこの記事を調べるように命じます。乗り気でないマクニール、それでも渋々引き受けます。

 マクニールが会った広告の主は貧しい初老の女でした。実はこの女はバンディ巡査殺しの犯人として服役している二人の内フランク・ウィチェックの母親で、12年間掃除婦として働いた金を賞金にして息子の冤罪を晴らそうとしていたのです。そこからマクニールの取材が始まります。

 この映画で面白いのは最初はマクニール記者が自発的に動くのではないことですね。編集長が渋るマクニールを動かそうとあの手この手を使います。マクニールと編集長のやりとりはアメリカ映画らしいユーモラスなものでとても愉快です。

 編集長としてはこの事件に冤罪の可能性を嗅ぎ取っていたのか、あるいは当たる記事になるからと思っていたのか、いずれにしても編集長の思惑通りにマクニールは動き出し、取材して記事を書きまくります。

 マクニールがウィチェックを無罪に出来るかどうかは、強盗に入られた店の女主人が偽証したことを証明する必要があります。この過程がサスペンスフルで観客は手に汗握ることになります。

 ラストはマクニールがこぼれる涙をこらえるかのように上を向いている姿を映し出します。名作だと思いました。

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 『裏切りの街角』(Criss Cross)はもしフィルム・ノワールのマニュアルがあったら、その通りに作ったんだろうなと思わせるユニバーサル映画作品です。

 ドイツ出身のロバート・シオドマク監督が、フィルム・ノワール独特なハードボイルドな世界を舞台に、バート・ランカスター演じる主人公スティーヴの転落の運命を描きます。

 スティーヴの元妻アナをイヴォンヌ・デ・カルロが演じていますが、これがファム・ファタルの典型のような女です。派手好きで嘘つきで不誠実、深慮せずに行動して男を破滅させる魔性の女です。こういう女と付き合ったら命がいくつあっても足らないことはフィルム・ノワールを何本も観ているとよく学習できます。

 スティーヴが久々に故郷に帰ったのが間違いでした。昔の現金輸送会社に再就職したスティーヴはある夜地元のヤクザであるスリム(ダン・デュリエ)とナイトクラブで遊ぶ元妻を見かけます。でも、アナはスティーヴにスリムは只の友達だと言い張り、スティーヴはまたアナと付き合いだします。しかし、急にアナはスリムと結婚してしまいます。実は幼馴染ののラミレス警部(スティーヴン・マクナリー)がアナにスティーヴと付き合うことを禁じたのです。

 邪魔されると燃え上がる恋心。スティーブはすっかりアナに翻弄されて、逢引を重ねます。当然スリムにばれてしまい、スティーヴが苦し紛れに口からでまかせで話したのは現金輸送車強盗の計画。とうとう後に引けない状況に陥ります。

 スティーヴはとにかく元妻のアナがスリムにひどい目に合わされないようにすることを考えて犯罪に手を染めます。一方、アナはスティーヴの気持ちも考えず、ひたすら自分の欲望のために行動します。愚かです。二人とも絵に描いたような愚か者です。スティーヴは最後までアナを信じて、盗んだ現金を持って逃げるように伝えます。バート・ランカスターとイヴォンヌ・デ・カルロはまさにはまり役です。

 現金輸送車強盗は成功しますが、スティーヴはスリムの裏切りにより怪我を負い、同僚は死んでしまいます。重体で入院するスティーヴにラミレス警部は真実を話してスリムの復讐から身を守れと諭します。それを断るスティーヴ。案の定スリムの部下が忍び込んできました・・・。

 フィルム・ノワールの常套手段である主人公の回想と独白が使われます。『ローラ殺人事件』のようには驚かされることはありませんでしたが、ラストは本当にノワールの教科書のようであり、人工的な構図の画面の美しさに酔いました。

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坊主頭も可愛い芦川いづみさんの青春編!・・・『美しい庵主さん』(日活、1958年)@神保町シアター

 神保町シアターの特集企画「恋する女優 芦川いづみ アンコール」は二週目に入っており、今日は『美しい庵主さん』を鑑賞することが出来ました。1958年制作の日活映画で未だにソフト化されていません。芦川いづみさんは当時23歳です。

現代っ子の男女大学生(浅丘・小林)が夏休みに転がり込んだ、都会から離れたある尼寺。そこには美しい尼僧(芦川)がいた…。当時23歳の芦川が、尼姿で登場するユーモラスな青春篇。愛らしい坊主頭の芦川から目が離せない。。(神保町シアター特集チラシより)

 能登半島の山村にある尼寺に庵主の姪の悦子とボーイフレンドの昭夫が夏休みを過ごしに来ます。若い大学生の二人を浅丘ルリ子と小林旭が演じています。

 その尼寺には庵主さんをはじめ本当に人間味に溢れた尼さん達が暮らしています。在家のご婦人と変わらずに人の悪口を言ったり、愚痴をこぼしたりユーモラスな姿が描かれます。

 その中で次代の庵主となることを期待されている才色兼備の美しい昌妙尼が修行していました。芦川さんはこの昌妙尼を演じています。

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 昌妙尼は貧しい漁師の娘だったのですが、跡継ぎを育てたい庵主に見込まれて仏門に入ったのです。金沢の県立大学に通っていて、大学の男子達にも結構人気があります。何通もラブレターを送ってくる匿名のファンもいるようです。

 昌妙尼が兄の就職祝いに実家へ戻った時のことが描かれます。弟妹達にはお土産の饅頭を「葬式饅頭」と言われ、実の両親達には手を合わせて拝まれてしまいます。口減らしのため家族の犠牲となったのみならず、おそらくは寺から両親への相応な援助もあったからなのでしょう。でも、そんなことをされては、誰でも怒ります。昌妙尼は実家を飛び出してしまいます。

 家族からは敬遠されて孤独を痛感した昌妙尼は、自身は庵主さんに大切にされて大学にも通わせてもらえる恵まれた境遇にも関わらず、若い二人(と言うよりは小林旭)を見て迷いが生じてしまいます。

 芦川さんは尼さんの役なので当然剃髪しています。坊主頭の芦川さんがとにかくとても可愛いです。真剣に人生に悩み恋に悩む尼さんなんてこの映画以外では見られないでしょう。

 昌妙尼とは逆に悦子と昭夫は昌妙尼との交流を通じて、自分達の青春の大切さを自覚するようになります。小林旭と浅丘ルリ子は当時20歳と18歳。濃厚なキスシーンがあったり、かなり際どい台詞も多かったりと日活の青春映画らしい奔放さが発揮されています。二人がコンビを組む渡り鳥シリーズがスタートするのはこの映画の翌年になります。

 昌妙尼に求婚するために、匿名のラブレターの主が訪ねてきます。昌妙尼はラブレターを返して、断ります。その男は容姿に難ありなのですが、もし彼が小林旭並みに美男子だったらどうなっていたのでしょうか?
 
 有吉佐和子原作、西河克己脚本・監督のちょっと変わった青春コメディでした。

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2016.02.10

一筋縄ではいかない男と女!「フィルム・ノワール傑作選」で珠玉の作品群を堪能!・・・『失われた心』、『ボディガード』、『ミステリー・ストリート』、@シネマノヴェチェント

 西横浜/戸部のシネマノヴェチェントで開催された「フィルム・ノワール傑作選」で3本鑑賞することが出来ました。デジタルではありますがいずれもきれいなマスターで劇場鑑賞できたのは嬉しいです。今回気に入った作品や見逃した有名作品はDVDを買ってでも見ようと思っています。第二弾もあるとのことなので是非期待したいと思います。

 今回鑑賞したのはジョーン・クロフォード熱演の『失われた心』、リチャード・フライシャー監督の初ノワール『ボディーガード』、ジョン・スタージェス監督でリチャード・ブルックスが脚本な参加した『ミステリー・ストリート』です。全部が全部、フィルム・ノワールというジャンルの定義に当てはまる映画なのかどうかは個々人の解釈にもよると思います。

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 『失われた心』(Possessed)はジョーン・クロフォードがアカデミー主演女優賞にノミネートされた1947年作品(日本では1950年公開)で、他のフィルム・ノワールと違い男女が逆転した構成となっています。ファム・ファタルならぬ「オム・ファタル」はヴァン・ヘフリン演じるデイヴィッドです。こいつが本当にイヤな奴です。

 ジョーン・クロフォードは冒頭ロスの街中をデイヴィッドと叫びながら彷徨い歩く記憶喪失の女として登場します。精神科に運び込まれた彼女は医師の治療で徐々に記憶を取り戻していくのですが、その過程でルイーズが思い出した記憶を観客は観ることになります。

 湖畔の屋敷に住むグレアム家の看護婦だったルイーズは、恋人と思い込んでいた湖の向こうに住む建築技師デイヴィッドに手痛く振られ、デイヴィッドはカナダに去ります。失意のルイーズは雇い主であるディーン・グレアムと結婚します。幸せな結婚生活もつかの間、デイヴィッドが帰国し、ディーンの娘であるキャロルにちょっかいを出し始めます。そこからグレースの精神は徐々に狂い始めます。

 回想、時系列の混乱、愛憎、裏切り、嫉妬、殺人、混乱、サスペンス、(裏返しの)ファム・ファタル…、様々なフィルム・ノワールの定石的な手法を使って見事なサスペンス映画を作り上げていますが、この映画は同時に女性の原作者(リタ・ワイマン)による女性の視点を持った女性映画でもあり、かつこの時期に流行したニューロティック(異常心理)・スリラーでもあります。

 ジョーン・クロフォードはこの映画で二年前の『ミルドレッド・ピアース』(受賞)に続き、アカデミー主演女優賞にノミネートされていますが、残念ながら受賞は出来ませんでした。

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 『ボディガード』はRKOラジオ・ピクチャーズの1948年作品で、日本では劇場未公開です。62分と短い映画ですが、逆にテンポの良い佳作となっています。

 巨匠リチャード・フライシャー監督の初期作で、殺人事件の犯人に仕立て上げられたローレンス・ティアニー扮する元刑事マイク・カーターが、恋人ドリスと真犯人を追います。

 マイクは典型的なハードボイルドの主人公で、気に入らない奴は構わず鉄拳制裁する熱血漢です。冒頭から嫌な上司を殴って、警察をクビになります。精肉会社の社長のボディガードに雇われたマイクは襲われて殺人犯に仕立て上げられ、自分が誰かに嵌められたことを知ります。

 ドリスはそんなマイクが心配だけど、惚れたマイクの頼みなら危険な任務も嬉々として遂行する気立ての良い娘です。二人とも大の野球好きだけど球場では隣に座って別々のチームを応援しています。主人公コンビの明るさがこの殺伐とした映画を救っています。

 とにかくこの映画の面白さは表立って動けないマイクをドリスが助けて警察の目を掻い潜りながら捜査を進展させるところにあります。マイク役のローレンス・ティアニーはロバート・ワイズ監督のノワール『生まれながらの殺し屋』でも主役しています。ドリス役は『逃走迷路』や『毒薬と老嬢』など戦前から活躍していたプリシラ・レインです。

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 三本目は『ミステリー・ストリート』、MGMの1950年作品で日本では劇場未公開です。夫の冤罪を晴らすために妻(サリー・フォレスト)が努力するお話ですが、主人公は妻も夫でもなく捜査に当たる刑事です。

 ナイトクラブのウェイトレスをしているビビアンは付き合っている男がいるらしい、ある日酔っ払った客を店から連れ出し、彼の車を運転して海岸近くの町まで向かう。そこでビビアンは車を盗んで逃げてしまう。その日からビビアンの姿を見かけた者は誰もいなかった。 ある日海岸で白骨が見つかるが・・・。

 ハーバード大学が協力しているらしく、冒頭とエンディングに謝辞?が出ます。リカルド・モンタルバンの刑事とブルース・ベネットのハーバード大法医学教室教授のコンビがとても良い味を出しています。前半は科学捜査での謎解き、後半は犯人を追い詰めるサスペンスになります。

 リカルド・モンタルバンはヒスパニック系移民の刑事ピーター・モラレス役で好演しています。モンタルバン自身がメキシコ出身ですから適役です。犯人は建国以前から住んでいるエスタブリッシュメントです。ピーターと犯人の対比が上手いです。

 エルザ・ランチェスターがビビアンのアル中の大家役で出演しています。いつも酔って朦朧としていて、犯人を脅して大金を得ようとするような悪女で、本当に嫌な女の役をとてもいやらしく(つまり上手く)演じています。

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 私個人が好むフィルム・ノワールの定義は、主人公がニヒルで頭が悪く運も悪い、他の登場人物は少ないが全員暴力的、ファム・ファタルは無駄に美人だがかなり愚か、モノクロ画面で照明少なく逆光多用、短尺90分以内、最後に死ぬ登場人物でも構わずに回想と独白で説明しまくり、という感じです。

 今日の三本は定義にピタッと当てはまるものではないものの、バラエティに富んだ傑作揃いで、とても楽しく観ることができました。

注:"JP"と記載された写真はAmazon..co.jp(日本)に、"UK"と記載された写真はAmazon..co.uk(英国)に、"USA"と記載された写真はAmazon.com(米国)にリンクしていますので、ご注意ください。

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オカルト、幽霊、人狼から吸血鬼まで!珠玉の怪奇小説七編!・・・『イギリス怪奇幻想集』(岡達子訳編、現代教養文庫)

 現代教養文庫の『イギリス怪奇幻想集』を読みました。もちろん古書で、岡達子さん訳編の98年初版です。アンソロジー"Ghost stories"から英国作家を抜粋して7編を訳出したとのことですが、この7編がオカルト、幽霊、人狼から吸血鬼まで珠玉とも言える作品ばかりで嬉しくなります。

Content

 マーガレット・アーウィンの「早朝の礼拝」(THE EARLIER SERVICE)は悪魔崇拝テーマの短編で、古い教会の牧師の娘が大昔に教会で行われていたという邪悪な黒ミサを目撃してしまうお話です。娘にしか見えない(らしい)不気味な光景が意味するところは容易に推測できるのですが、果たして娘は救われるのか・・・。とにかくラストの台詞が衝撃的です。

 F・G・ローリングの「セアラの墓」(THE TOMB OF SARAH)は1900年に発表された正統な女吸血鬼譚です。17世紀の女吸血鬼の墓を動かすこととなって、例に違わず怪異が起こるようになります。伝説の披露から吸血鬼退治までが実に吸血鬼もののお手本のような流れです。カーミラやドラキュラの大時代な冗長性を排除してコンパクトにまとまっていて、そのまま映画化もできそうです。とても好きな一編です。

 怪奇小説の巨匠アルジャーノン・ブラックウッドの「メディシン湖の狼」(RUNNING WOLF)は「あとがきにかえて」には初訳と書かれていますが、実は「ランニング・ウルフ」のタイトルで既に訳されている人狼譚です。カナダのメディシン湖に釣りにやってきた主人公が遭遇した不思議な狼は、どこか特定の場所に主人公を導こうとします。その場所を主人公が掘ると・・・。ブラックウッドらしく野生の持つ超自然的な力を題材にしており、禍々しい幽霊譚ではなく、爽やかな読後感の名作です。

 『銀の仮面』で有名なサー・ヒュー・ウォルポールの「ラント夫人の亡霊」(MRS LUNT)は逆に禍々しい幽霊譚の類になります。語り手が夕食に招待した友人に幽霊の存在を問うたところ、友人が一気に語ったのは昔遭遇した不気味な話でした。十五年ほど前に同じ作家仲間のラント氏を訪ねた友人は、ラント氏の奇行に翻弄される。次第に狂気を募らせていくラント氏はどうやら亡くなったラント夫人の幽霊に悩まされているらしいのです。ラント氏と友人と共に読者も恐怖に震える経験をします。とにかく怖い一編です。

 アン・ブリッジの「ビュイックにつきまとう声」(THE BUICK SALOON)は、北京を舞台にした怪異談です。作者は実際に中国で暮らしたことがある女流作家で、この小説も女流らしい着想で怪異を描きます。イギリスの銀行の北京支店長夫人が買った中古のビュイックに乗ると、なぜか女性の声が聞こえてきます。その声は他の人間には聞こえないようです。はたしてその声は支店長夫人の幻聴なのか、あるいは幽霊が発する声なのか、不明なままに物語は進みます。ラストは急転直下、謎は解決したものの、支店長夫妻のこれからが大いに気にかかります。

 E・F・ボズマンの「白い道」(THE WHITE ROAD)は、少し難解な幽霊談です。田舎にクリスマス休暇を過ごしに来た主人公が、いきつけのパブから滞在先の農場に戻る途中の「白い道」で出会う怪異譚です。解釈は観客まかせですが、私にはラストの台詞の意味がよく理解できていません。落ちになっているのか、それともそうではないのでしょうか。

 J・シェリダン・レ・ファニュの『ウォッチャー』(THE WATCHER)は創元推理文庫の『吸血鬼カーミラ』に所収されている「仇魔」という平井呈一訳の邦題の方が有名です。ただし、こちらの『ウォッチャー』の方は解説役のヘッセリウス博士が登場しません。アンソロジー用に省いたものなのでしょうか。物語は大英帝国の退役軍人であるバートン大佐が若い娘と婚約した時点から始まります。大佐はどうやら謎の存在に付け狙われているようです。謎の存在からの精神的な攻撃は徐々に激しさを増し、婚約者の父親や大佐の周辺の人物が大佐を守ろうとしますが、なすすべがありません。次第に弱っていく大佐。レ・ファニュの怪談は「落ち」で一挙に片をつけるタイプではなく、むしろストーリーテラーです。このお話もなぜバートン大佐は付け狙われているのか、その謎は最後に明かされます。いかにもミステリー作家でもあったレ・ファニュらしい決着のつけ方です。


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2016.02.02

笑って泣けるオムニバスプレイ!高樹澪さんのまさかのコスプレも!・・・『リバース★ボーイ』(JOE Company)@下北沢劇小劇場

 今日は高樹澪さんがご出演されるオムニバスプレイ『リバース★ボーイ』の初日でした。会場は下北沢の劇小劇場で、下北沢演劇祭参加作品なのだそうです。

 昨年の同時期にも高樹さんが出演する『マギサの家』を観劇しましたが、『リバース★ボーイ』と同じく小野寺 丈さん率いるJOE Companyの主催公演で、小野寺さんの作・演出でした。

 小野寺さんは『リバース★ボーイ』に続いてこの劇場で上演される一人芝居『ミリガンの階段』のため、『リバース★ボーイ』の演出は他の方に譲り、脚本・総指揮を担当されています。

 お芝居は6場からなるオムニバスなのですが、まったくバラバラのお話ではなく全体で一つのストーリーが形作られています。4人のキャストが二人づつ登場して場を演じます。十年間に渡る出来事が迎える結末は見事で、爆笑しつつ最後はホロっとさせるコメディでした。

 澪さんも三場に出演しますが、お相手は三人の若い男優さん。場毎に三人が様々な役を演じ分けますが、タイトルロールの役は何と三人がそれぞれの年代を演じており、三人一役となっています。特にAct.3での澪さんはまさかの◯ー◯ー服姿で登場したり、JK声で会話したり、と大熱演でした。


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(2月6日追記)

 今日は『リバース★ボーイ』トークイベントの日でした。出演者3名と主催の小野寺丈さん主催の小野寺丈さんを入れた四人でお芝居と同じく二人づつのトーク×6と最後に四人全員ででのトークでした。

 高樹澪さんの可愛らしいを若い俳優さん達と丈さんが引き出して、とても楽しいお話が聞けました。澪さんのお話はUFOからお芝居にも「参加」している下着コレクションのお話まで幅広く、爆笑の連続でした。

 初日に澪さんは緊張の余り舞台でオエーっと吐きそうになったとのこと。丈さんが自分と澪さんはウルトラマン繋がりで、澪さんはティガの隊長だったと紹介したところ、澪さんが言った一言は「よくこんなんで地球の平和を守れたなって・・・」。

 とにかく、『リバース★ボーイ』はとても面白いお芝居で、とてもお勧めです。

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