« 詩情豊かで不思議な寓話集!蛇が問いかけ、柳が踊る!…『郵便局と蛇 A・E・コッパード短篇集』(ちくま文庫、A・E・コッパード・作、西崎憲・編訳) | トップページ | 成瀬巳喜男のサスペンス映画!女の怖さを堪能する二本立て!…『女の中にいる他人』『ひき逃げ』『検証日本映画Vol.14 成瀬巳喜男の、感動の世界』@新文芸坐 »

2014.09.18

成瀬巳喜男には珍しい子供映画!劇場でしか観られない名作二本立て!…『秋立ちぬ』『コタンの口笛』『検証日本映画Vol.14 成瀬巳喜男の、感動の世界』@新文芸坐

 池袋の新文芸坐で成瀬巳喜男特集の二本立て『秋立ちぬ』と『コタンの口笛』を観ました。どちらも名作で、かつどちらもソフト化されていないので貴重な機会でした。但し、どちらも救いようのない終わり方をするので、落ち込んでる時には見ない方が良い映画です。

 『秋立ちぬ』は80分にも満たない小品ながら成瀬自ら製作に当たった貴重な作品です。信州から東京へ出てきた男の子の夏休みの体験を綴ります。但し成瀬巳喜男なのでほのぼのとはしていません。男の子の母親は当然の如くいい仲になった男と駆け落ちして、男の子は途方に暮れるのです。

 原案は笠原良三(スタッフ表では「脚本」)です。東宝コメディとは違う子供視点で大人の世界の猥雑さを見せつけます。主人公の秀男も順子も大人の犠牲者です。昭和三十年代の東京をドキュメンタリーのように切り取った、まるでイタリアン・ネオレアリズモのようなこの映画の味わいを愛でる人は多いだろうと思います。

 服部時計店横を走り抜ける銀座中央通りの都電や松坂屋の屋上遊園、まだ埋め立てられたばかりで何もない晴海の埠頭、泳いでいる人がいた自然豊かな多摩川等、まさに『ALWAYS』の時代、昭和三十年代の東京の実景を今に伝えてくれます。

 主人公の秀男が夏木陽介扮する八百屋の息子から「三原橋の映画館」という台詞が聞けます。これは昨年閉館した銀座シネパトスの前身である銀座地球座のことかと思いましたが、この映画が1960年の作品なので違うようです。三原橋近辺に映画館があったのでしょう。

JPJP

 『コタンの口笛』は1959年の公開で、原作は児童文学の大家・石森延男の小説です。二部作の前半「あらしの歌」のみを映画化した作品なので、主要な登場人物が全て不幸なままで終わるという悲惨な映画になっています。二回も葬式の場面があり、一人の女性は失踪し、主人公の男の子は大怪我し、家は取られて追い出されます。なぜ続編が作られなかったのかは不明ですが、この映画を観ると何としてでも後半「光の歌」を作って欲しかったと思います。

 この映画は東宝特撮所縁のオールスター出演映画でもあります。宝田明、志村喬、土屋嘉男、水野久美、久保明、村上冬樹、田島義文、左卜全、加藤茂雄…。主人公の姉弟には幸田良子と久保賢(久保明の実弟で後の山内賢)が扮しています。スタッフにもお馴染みの名が並んでいます。製作は田中友幸、助監督に梶田興治、脚本は橋本忍、そして音楽は北海道出身でアイヌ文化にも造詣深かった伊福部昭です。

 東宝スコープのカラー映画で、題名になっているコタン(アイヌの集落)の脇に流れる支笏湖からの流れの映像等、北海道でロケされた自然の風景がとても美しい映画です。

 また、千歳市を舞台にしているため、米軍接収時代の千歳基地で主人公姉弟の父親が働くシーンがあります。ちょうど公開年の1959年7月に千歳基地が日本に返還されることになったため、米軍が帰国して父親は失業してしまうという展開が出てきます。

注:"JP"と記載された写真はAmazon..co.jp(日本)に、"UK"と記載された写真はAmazon..co.uk(英国)に、"USA"と記載された写真はAmazon.com(米国)にリンクしていますので、ご注意ください。

|

« 詩情豊かで不思議な寓話集!蛇が問いかけ、柳が踊る!…『郵便局と蛇 A・E・コッパード短篇集』(ちくま文庫、A・E・コッパード・作、西崎憲・編訳) | トップページ | 成瀬巳喜男のサスペンス映画!女の怖さを堪能する二本立て!…『女の中にいる他人』『ひき逃げ』『検証日本映画Vol.14 成瀬巳喜男の、感動の世界』@新文芸坐 »

コメント

三原橋の新橋寄りのところに三和興行系の映画館があったようです。東京温泉のとなり辺りだったと思いますが。葛井欣四郎の本に書いてありました。

投稿: さすらい日乗 | 2015.07.31 00:28

さすらい日乗さん、コメントありがとうございます。あの頃も三原橋に映画館があったんですね。参考になりました。

投稿: モリアーチー | 2015.08.01 15:13

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/49025/60339795

この記事へのトラックバック一覧です: 成瀬巳喜男には珍しい子供映画!劇場でしか観られない名作二本立て!…『秋立ちぬ』『コタンの口笛』『検証日本映画Vol.14 成瀬巳喜男の、感動の世界』@新文芸坐:

« 詩情豊かで不思議な寓話集!蛇が問いかけ、柳が踊る!…『郵便局と蛇 A・E・コッパード短篇集』(ちくま文庫、A・E・コッパード・作、西崎憲・編訳) | トップページ | 成瀬巳喜男のサスペンス映画!女の怖さを堪能する二本立て!…『女の中にいる他人』『ひき逃げ』『検証日本映画Vol.14 成瀬巳喜男の、感動の世界』@新文芸坐 »