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2014.09.30

松本清張の名作映画化二本!『霧の旗』と『けものみち』を堪能!…『秋の文芸映画特集』@新文芸坐

 新文芸坐の秋の文芸映画特集で松竹版の『霧の旗』と東宝の『けものみち』を鑑賞しました。共に松本清張原作で昭和40年公開の名作です。

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 『霧の旗』は復讐をテーマにした作品で、主人公の柳田桐子を演じた倍賞千恵子の代表作の一つです。12年後には山口百恵の主演映画としてリメイクされ、またTVでは何度も繰り返しドラマ化されていますが、やはりこの倍賞版には敵いません。監督は後年寅さんシリーズで倍賞千恵子を使い続けるようになる山田洋二です。

 熊本で発生した老婆殺しの犯人として、被害者から金を借りていた教師の柳田が逮捕されます。柳田の妹の桐子は兄を救うため、東京に出向いて有名な弁護士の大塚に弁護を依頼しますが、多忙を理由に断られてしまいます。桐子の兄は判決を待たずに獄中で無実を訴えながら病死してしまいます。翌年、大塚は兄の死後に上京していた桐子と再会します。

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 とにかく、この映画では桐子が何を考えているのか、男社会の常識を以っては理解できないところがとても怖いのです。獄死した兄の復讐だけではなく、自分の依頼を断ったことに対する復讐であることを大塚弁護士は理解できていません。だから、兄が無罪だったことも真犯人が誰かも桐子には興味がありません。言わば完全な逆恨みですが、桐子に取っては復讐だけが生きがいになります。倍賞千恵子はそんな頑なで一途な桐子役を完璧に演じています。

 この映画は原作に忠実に桐子対大塚の話に絞ったことによって緊迫感を維持できていると思います。脚本は橋本忍が書いています。77年版はアイドル映画として、相手役の三浦友和演じる記者の存在を大きくし過ぎているので、まるで別物のようです。

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 併映の『けものみち』もこれまた何度TVドラマ化されたのかわからない清張の人気作ですが、映画化されたのはこの一本のみです。とにかく池内淳子と池部良が放つ淫靡さに貫かれた一本になっています。

 旅館の住み込み女中をしている成沢民子は、客の小滝に唆されて重病の夫を失火に見せかけて焼き殺します。民子は政財界のフィクサーである鬼頭洪太の邸宅で愛人になり、奔放な生活を送るようになります。しかし、刑事の久恒は失火事件に不審を抱きます。

 東宝映画らしい馴染みの顔が多く出ています。珍しく小林桂樹は悪徳刑事を演じていますし、黒部進は殺人も平気な鬼頭の部下を演じ、救いのないラストシーンでは熱演しています。

 鬼頭の女中頭(実は前の愛人)役の大塚道子が米子という役名なので思わず笑ってしまいました。大塚が『牡丹燈籠』で幽霊のお米役を演じるのはこの映画の三年後のことです。きっとこの映画での熱演がお米につながったのではないでしょうか。

注:"JP"と記載された写真はAmazon..co.jp(日本)に、"UK"と記載された写真はAmazon..co.uk(英国)に、"USA"と記載された写真はAmazon.com(米国)にリンクしていますので、ご注意ください。

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コメント

『霧の旗』は、フランス映画『眼には眼を』を基にしたと松本清張が書いています。霧子の執拗さは、やや異常なものがあるのですが、「原作」が外国物の性だと思います。
数年前の「カラー映画特集」でフィルムセンターで『眼には眼を』も見ましたが、これはフランス人医者へのアラブ人の復讐を描くもので、非常に執拗なものでした。

投稿: さすらい日乗 | 2015.08.14 11:14

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