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2014.09.03

奇想で綴る犯罪と恋愛!珠玉の「奇妙な味」16編!…『予期せぬ結末1 ミッドナイト・ブルー』(扶桑社ミステリー、井上雅彦・編、ジョン・コリア・作、植草昌実他・訳)

 扶桑社ミステリーで『予期せぬ結末1 ミッドナイト・ブルー』を読みました。ジョン・コリアの短編が16編収録されています。ブラックなユーモアと洒脱さに包まれたジョン・コリアの奇想は止まることを知りません。

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 ジョン・コリアは1901年ロンドン生まれ、後にアメリカに移り住んでから日本でも公開された『嵐の中の青春』や『三つの恋の物語』などハリウッド映画の脚本も手がけています。

意想外の設定と冴え渡るラストのひねり。 稀代のアンソロジスト・井上雅彦が贈る、海外異色作家短篇シリーズ、ついに始動! 第一巻では、異才ジョン・コリアの傑作集をお届けする。 皮肉な笑いと綺想あふれる作風で知られる名手の短篇から、未訳作と個人集未収録作を中心にセレクト。 犯罪者に待ち受ける意外な陥穽を描く表題作ほか、美食ミステリーのパロディ作「完全犯罪」、天使と 悪魔が恋の駆け引きを繰りひろげる「恋人たちの夜」など、犯罪と恋愛をめぐる珠玉の16篇を収録! 〈解説・植草昌実〉(内容紹介より)

 『予期せぬ結末1 ミッドナイト・ブルー』はインターミッションを挟んだ二部構成で第一部は「犯罪と幻想」編です。夫婦間の確執を巡る犯罪のお話が多く、大人の読み物としてのミステリ風7篇を楽しめます。ここで言う「幻想」は"fantasy"ではなく、"illusion"でしょう。つまり、夫婦や男女間の錯覚のことです、特に男が女に抱くことが多いですが。

 第一部の作品は、『またのお越しを』(植草昌実さん訳)、『ミッドナイト・ブルー』(田口俊樹さん訳)、『黒い犬』は(植草昌実さん訳)、『不信』(植草昌実さん訳)、『よからぬ閃き』(植草昌実さん訳)、『大いなる可能性』(田村義進さん訳)、『つい先ほど、すぐそばで』(植草昌実さん訳)。

 『またのお越しを』は、読後ニヤッとしてしまうような掌編です。きっと読者の中にもこの薬屋に行きたくなる方がいらっしゃるでしょう。

 表題作の『ミッドナイト・ブルー』はやはり印象に残る名作です。殺人事件のお話です。ある夜帰宅した夫の黒いマフラーが・・・。なお、「ミッドナイト・ブルー」は黒と見間違うような深い青のことです。

 『黒い犬』はなぜか黒い仔犬を怖がる未亡人のお話。ホラーかな?と思わせて、ラストは皮肉に終わる佳編で楽しめました。また、『よからぬ閃き』もエスプリが効いた小編です。

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 インターミッションの2篇はいずれもパスティーシュ。『完全犯罪』(小鷹信光さん訳)は「美食ミステリーのパロディ」と言うよりは、ずばりバークリーの『毒入りチョコレート殺人事件』が元ネタだと思います。犯罪の証拠品であるチョコレートを味見してしまった捜査陣の出した結論は?こんなチョコレートなら一度食べてみたいものです。

 ホームズをはじめとする名探偵譚のパロディであろう『ボタンの謎』(植草昌実さん訳)は、メイドの部屋に落ちていたボタンを細君に追究されて珍推理を延々と披露する羽目になる夫君の心境や如何に!?と言うお話。夫君の必死な顔と細君の呆れ顔が目に浮かびます。

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 第二部「恋愛と寓話」ではラヴロマンスもありますが、むしろ何事も一筋縄では行かないコリアらしいエスプリの効いた寓話が多くて楽しめます。

 収録作は『メアリー』(田村義進さん訳)、『眠れる美女』(山本光伸さん訳)、『多言無用』(伊藤典夫さん訳)、『蛙のプリンス』(田口俊樹さん訳)、『木鼠の目は輝く』(植草昌実さん訳)、『恋人たちの夜』(伊藤典夫さん訳)、『夜、青春、パリそして月』(伊藤典夫さん訳)の7篇。

 『メアリー』は豚を交えた三角関係のお話。読んでいると豚のメアリーがとてもとても憎たらしく思えてくるのですが・・・。

 『多言無用』は猫に言葉を教えて予言をさせようとする男のお話です。彼にとって必要だったのは言葉よりも意思の疎通だったのでしょうね。

 『恋人たちの夜』は天使と悪魔が恋を競います。恋愛は妥協も必要で、落ち着くところに落ち着くのは人間だけではありませんね。

 大昔に創元推理文庫の『怪奇小説傑作集2』に入っていたジョン・コリアの『みどりの想い』を読んで、怪奇というよりはむしろ惚けたようなユーモラスなその奇想には驚愕させられました。奇妙な味の作家の作品を読んだのは初めてだったと思います。その後、サキ、ブラウン、ブロック、ブラッドベリ、星新一などの短編を読み漁るようになった記憶があります。

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 ジョン・コリアの翻訳は、現在でも入手可能な早川書房の異色作家短篇集の一冊である『炎のなかの絵』と河出書房新社のKAWADE MYSTERYシリーズの 『ナツメグの味』を読めばほとんどカバーできるようです。続けて読んで当分コリア漬けになろうかとも思います。

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 この『予期せぬ結末』は「奇妙な味」系の作家の短編集でシリーズ化されており、既に第2巻がチャールズ・ボーモント、第3巻がロバート・ブロックで出ています(いずれも井上雅彦さん編、植草昌実さん他訳)。このシリーズも長く続いてくれることを望みます。

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 なお、『予期せぬ結末』シリーズのカバー・イラストはいずれもSF作品のイラストでおなじみのYOUCHAN先生です。ユーモラスでちょっと怖いこのシリーズのイラストにはまさにピッタリの絵柄です。カバー・イラストはYOUCHAN先生の画集『TURQUOISE ターコイズ』にも収録されています。

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注:"JP"と記載された写真はAmazon..co.jp(日本)に、"UK"と記載された写真はAmazon..co.uk(英国)に、"USA"と記載された写真はAmazon.com(米国)にリンクしていますので、ご注意ください。

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コメント

はじめまして。
《予期せぬ結末》の翻訳をしております、植草昌実と申します。
第一巻『ミッドナイト・ブルー』をご紹介いただき、ありがとうございます。
お楽しみいただけて、光栄です。
このシリーズが続けられるよう、編者、出版社ともども、頑張っております。これからも、ご支援いただければ、幸いに存じます。

投稿: 植草昌実 | 2014.09.22 22:32

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