カテゴリー「6.【観劇】」の記事

2016.02.02

笑って泣けるオムニバスプレイ!高樹澪さんのまさかのコスプレも!・・・『リバース★ボーイ』(JOE Company)@下北沢劇小劇場

 今日は高樹澪さんがご出演されるオムニバスプレイ『リバース★ボーイ』の初日でした。会場は下北沢の劇小劇場で、下北沢演劇祭参加作品なのだそうです。

 昨年の同時期にも高樹さんが出演する『マギサの家』を観劇しましたが、『リバース★ボーイ』と同じく小野寺 丈さん率いるJOE Companyの主催公演で、小野寺さんの作・演出でした。

 小野寺さんは『リバース★ボーイ』に続いてこの劇場で上演される一人芝居『ミリガンの階段』のため、『リバース★ボーイ』の演出は他の方に譲り、脚本・総指揮を担当されています。

 お芝居は6場からなるオムニバスなのですが、まったくバラバラのお話ではなく全体で一つのストーリーが形作られています。4人のキャストが二人づつ登場して場を演じます。十年間に渡る出来事が迎える結末は見事で、爆笑しつつ最後はホロっとさせるコメディでした。

 澪さんも三場に出演しますが、お相手は三人の若い男優さん。場毎に三人が様々な役を演じ分けますが、タイトルロールの役は何と三人がそれぞれの年代を演じており、三人一役となっています。特にAct.3での澪さんはまさかの◯ー◯ー服姿で登場したり、JK声で会話したり、と大熱演でした。


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(2月6日追記)

 今日は『リバース★ボーイ』トークイベントの日でした。出演者3名と主催の小野寺丈さん主催の小野寺丈さんを入れた四人でお芝居と同じく二人づつのトーク×6と最後に四人全員ででのトークでした。

 高樹澪さんの可愛らしいを若い俳優さん達と丈さんが引き出して、とても楽しいお話が聞けました。澪さんのお話はUFOからお芝居にも「参加」している下着コレクションのお話まで幅広く、爆笑の連続でした。

 初日に澪さんは緊張の余り舞台でオエーっと吐きそうになったとのこと。丈さんが自分と澪さんはウルトラマン繋がりで、澪さんはティガの隊長だったと紹介したところ、澪さんが言った一言は「よくこんなんで地球の平和を守れたなって・・・」。

 とにかく、『リバース★ボーイ』はとても面白いお芝居で、とてもお勧めです。

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2011.07.03

女優・神楽坂恵の本格的な初主演舞台!クーパー&オールビー&高瀬一樹の傑作ブラック・コメディーを堪能!…演劇『庭園のすべて』@MAKOTOシアター銀座

Teien1■女優・神楽坂恵の本格的な初主演舞台

 女優・神楽坂恵にとって二回目の演劇への挑戦にして、かつ本格的な初主演の輝かしい舞台となる『庭園のすべて』は、二○一一年六月二十九日(水)から七月二日(日)までの連続五日間、京橋のMAKOTOシアター銀座にて上演された。

 ダブルキャストで、もう一人の主演女優は神楽坂と同じ事務所に所属する大塚麻恵である。今回は神楽坂主演のAプログラムが5回、大塚主演のBプログラムが4回で、合計9公演。その内4回はマチネー、しかも2回は平日であった。平日の昼間に公演があるというのも、この規模のお芝居ではかなり珍しいことだと思われる。

 私は幸いなことに自分のオフィスから徒歩でも通える場所にある、この京橋の劇場に日参し、Aプログラムを4回とBプログラムを1回、合計5回の鑑賞を果たすことができた。これほど通い詰めるような機会はもうこれからもないかもしれない。そこで、神楽坂恵の素晴らしい熱演を堪能することができた記念に、この舞台のレビューを書いて残しておきたいと思う。但し、レビューと言っても神楽坂恵の一ファンから観た感想に過ぎず、あくまでも女優・神楽坂恵の素晴らしさについて語ることが目的である。

 なお、このお芝居の内容については、中央区観光協会のオフィシャルブログでの告知がよく本質を捉えているので、以下に引用しておく。なお、「ジャイルス・ブルック原作」と書かれているが、正しくは「ジャイルス・クーパー原作」である。その理由はわからないが明らかな間違いである。

梅雨時の鬱陶しい毎日、外を歩くのはちょっと・・という方も多いかもしれません。そんなときはぜひ、雨の心配のない屋内で楽しいお芝居を鑑賞しましょう! Dry Sense Of Humourがたっぷり堪能できる英国のダークコメディー「庭園のすべて」なら、湿った梅雨空をカラっと乾かしてくれそうです。 「庭園のすべて」 シアタージャパンプロダクションズ公演 ジャイルス・ブルック原作  高瀬一樹 翻案・演出 エドワード・アルビーの初期の代表作"庭園のすべて"(ブロードウェイ1967年初演)の元になる、イギリスの作家ジャイルス・ブルックによる台本を翻案し、上演します。 大都市の中流階級の家庭の女たちの売春という、センセーショナルなトピックを扱いながら、シチュエーション・コメディーのような軽妙なスタイルで描かれた、ダーク・コメディーです。 椅子を改装し、70席とさらに密になったMAKOTOシアター銀座の空間で、若い夫婦たちの悩める決断がもたらすトラジック・コメディーをご覧下さい。


■クーパー、オールビー、そして高瀬一樹

 『庭園のすべて』のフライヤーには「ジャイルス・クーパー原作 高瀬一樹 翻案・演出」とクレジットされている。それでは、この魅力あるお芝居を作ったクーパーという人物は一体何者なのだろうか? 

 "Giles Stannus Cooper"(ジャイルズ・スタナス・クーパー、なお、"Giles"の読み方は本来ジャイルズと濁ること多いが、『庭園のすべて』のフライヤーには「ジャイルス」となっている。これは後述の米国版の日本語翻訳本の記載と同一にしたものと思われる。)は、四十八年間の比較的短い生涯の内に、英国国営放送(BBC)のために六十を超えるラジオやテレビ用のドラマの台本を書いた俳優出身の放送作家である。彼の死後の一時期、BBCは出版社と組んで"Giles Cooper Awards"(ジャイルズ・クーパー賞)というラジオドラマ対象の賞まで作っていたとのことだが、今は途絶している。

 彼が書いたドラマのリストには、ラジオではジョン・ウィンダムの傑作SF『トリフィドの日(トリフィド時代)』、テレビ時代になってからはルパート・デイヴィス主演で好評を博したシムノンのメグレ警部や、後にピーター・カッシングが主演することになるドイルのホームズシリーズなどもあって、とても興味深いラインナップになっている。

 そのクーパーは少ないながらも戯曲を書いているのだが、その内の一本に"Everything in The Garden"という作品がある。そして、これはロイヤル・シェークスピア劇団によりロンドン芸術劇場で一九六二年三月十三日に初演されている。素直に解釈すればこれが今回の京橋版『庭園のすべて』の原作と言うことになるだろうが、それでは、このMAKOTOシアター銀座版は、クーパーの戯曲をそのまま翻訳したものなのかと言えば、実はそうではない。

 ネットで"Everything in The Garden"を検索すると、クーパーより先にエドワード・オールビー(Edward Albee)という名が出てくるだろう。『バージニア・ウルフなんかこわくない』等の戯曲で有名な米国の作家であるオールビーは、クーパーの死の翌年である一九六七年に"Everything in The Garden"を翻案して、米国版の『庭園のすべて』を書いている。

 同年にはブロードウェイのプリマスシアター(「オフ」ブロードウェイではない。千人人規模の劇場)で初演されたその戯曲は、日本でも八十年代に早川書房から翻訳出版されており、今でも比較的容易に入手できるのだが、残念ながらクーパー版の方は未訳であり、仕方なく私は英国から取り寄せて英語版を読んだ。

 京橋版『庭園のすべて』の「翻案・演出」担当である高瀬一樹はニューヨーク在住の演出家であり、今年一月には神楽坂恵が初舞台を踏んだピンター作の『祝宴(セレブレーション)』も演出している。彼がどのようにしてこの京橋版『庭園のすべて』を作り上げたのかは公表された資料もなく、わからないのだが、観劇当日に座席に置かれていた配付資料の「ごあいさつ」には「この戯曲は50年前に書かれたものですが、とても現代性にあふれた問題点や機知に満ちています。書かれた直後にエドワード・アルビーによってアメリカ版の翻案が60年代にブロードウェイで上演されています」との記載がある。

 そのため、この高瀬・京橋版はおそらくはクーパーのロンドン版ではなく、オールビー翻案のブロードウェイ版を底本とした翻訳劇と考えて間違いないだろう。但し、オールビー版とは明らかに異なっている箇所、クーパー版と同じ個所も多く、高瀬はオールビー版をベースに、クーパーの原作を参照しつつ、この舞台を作り上げていく過程で独自のものとしていったのだろう。

 そう推測する理由は他にもある。例えば今回の『庭園のすべて』に出演している植田靖比呂(Bプログラムでの主役男優)のブログ(2011.6.23付)には

【原作】ジャイルス・クーパー【脚本】エドワード・オールビー【翻案・演出】高瀬一樹

と記載されており、少なくとも初期の段階で出演者に配られた台本にはそのような表記があったと考えられる。

 オールビー版から独自の高瀬版へと進化していった結果、オールビーの名前は最終的にフライヤーからもポスターからも除かれたのではないだろうか。なお、このレビュー本文中に引用している台詞は、何も注記していない場合は上演された高瀬版を聞き取ったものである。


■ダブルキャスト

 観劇当日の配付資料には、表面に「CAST」として次のような名前が掲載されている。

ジェニー   : A 神楽坂 恵  / B 大塚 麻恵
リチャード  : A 梶原 涼晴  / B 植田 靖比呂
ロジャー   :   池田 優二郎
トゥース夫人 :   米倉 紀之子
ジャック   :   高橋 和久
チャック   :   草野 速仁
べリル    :   森川 凛子
ギルバート  : A だいすけ   / B 米山 剛
ルイーズ   :   木立 美鳥
シンシア   : A 大塚 麻恵  / B 神楽坂 恵
スティーブン : A 植田 靖比呂 / B だいすけ
ローラ    :   相原なな

 ここで、ジェニー&リチャードは主役となる夫婦であり、ロジャーはその一人息子だ。トゥース夫人とジャックはそれぞれこの劇の鍵を握る登場人物、べリル&チャック、ルイーズ&ギルバート、シンシア&スティーブンもそれぞれカップルである。最後のローラだけがなぜ単独で記されているのか?実はもう一人登場人物としてローラの夫であるペリーがいるのだが、(おそらくミスで)載っていない。本来ならば次のように記載があるべきだったのだろう。

ペリー    : A 林 佑太朗  / B 遠藤 祐太郎

 なお、オールビー版の『庭園のすべて』にはローラとスティーブンが登場しない。そのため、シンシアの夫がペリーになっている。しかし、ローラ役の相原ななはツイッターで英語版にはローラが登場すること、高瀬一樹が台詞はそこから取ってくれたということをツイートしている。

 キャスト表でのA、Bはダブルキャストのパターンを表しているが、実はA、B2パターンだけではなく変則的な組み合わせがあった。リチャード役の梶原涼晴はAでもBでも、夜の公演には出演しており、そのため、Bプログラム4回の内、7月1日と2日の2回の夜公演は大塚&梶原という組み合わせになっていたのだ。その場合、本来Bプロでリチャード役とされている植田靖比呂はAプログラムと同じくスティーブンを演じるため、Bプロでスティーブン役のだいすけが休演になっている。このレビューでは主に神楽坂恵が主演するAプログラムの内容に沿って書いている。なお、Bプログラムにも神楽坂恵はシンシア役で出演している。

 余談だが同資料には「~CAST紹介~」というコーナーもあり、ここにはリレー形式で出演者が他の俳優・女優に対して紹介文を書いており、神楽坂恵には夫役の梶原が次のようなコメントを寄せている。

普段は物静かな印象なんだけど実はよく笑ったり喋ったりもするんだけどそんなことはどうでもよくて、本当に素晴らしい女優です。

 そして、神楽坂恵自身は大塚麻恵に対してコメントしている。神楽坂恵の人となりがよくわかる一文である。

可愛いな大塚さん。純粋で真っ直ぐで天然なようで実は姉御肌。意外と大胆な笑い声も好き。話せば話す程面白く一緒にいればいる程・・ああとにかく愛らしい!


■前口上とプロローグ

 開始時間直前になると前口上が告げられる。その回に出演しない俳優が交代で務めているらしく、Aプログラムの時には米山剛であった。劇中でタバコを吸うシーンがあることを観客に予め断っておくのが主な目的で、実は使うタバコは医薬品(タン切り薬)のネオシーダで、ニコチンが極端に少ないんですよ、とのこと。タバコはこの芝居では重要な小道具の一つである。

 MAKOTOシアター銀座には幕がないが、便宜上「幕」という言葉を使うならばこの『庭園のすべて』は二幕三場の舞台劇である。そして、芝居がはじまる前にはプロローグというか、映画で言うアヴァンタイトルがある。

 ピンクの怪しい灯りに照らされた薄暗い部屋に男女が次々と入ってくる。そしてまた、次々と手を取り合ってどこかに消えていく。この場面はこの芝居の内容を暗示するものだが、主演を除いたほとんどの出演者が第三場にならないと出番がないということもあり、顔見世の意味もある。なお、このプロローグにはリチャード役の梶原は登場しない。ここでの音楽は女性の喘ぎ声が雑じったセクシャルなものだ。

 主演のジェニーを演じる神楽坂恵はこのプロローグで、観客席の通路が兼ねる花道を歩いて後方から登場する。そして振り返って客席を見るとすぐに、ロジャー役の池田優二郎の手を引いて、下手に設えてある階段(そのまま二階の楽屋に通じる)を昇っていく。

 この時の神楽坂恵はノースリーブのワンピース姿である。髪は束ねているが縛らずに横に流している。この髪型は神楽坂の髪のしなやかさが引き立ち、とても美しく女性らしい姿だった。さて、いよいよ芝居が始まる。


■第一幕 第一場 ~ジェニーとリチャード~

 イギリス人のクーパーが書いた戯曲は当然英国のお話なのであるが、アメリカ人のオールビーが書いたバージョンはアメリカに舞台を移している。そして、高瀬版も北米が舞台だ。場所は詳しくはわからないのだが、登場人物であるジャックの台詞から「ニュー・ポート」郊外らしいと思われる。しかし、これには意味はない。英国ならば当然「ニュー・ポート」はウェールズの有名都市を指すだろうが、アメリカ合衆国では多くの海に面した州が有する地名である。つまり、アメリカのどこか特定できない(とは言ってもカリフォルニアではなく東海岸だろうが)郊外のありふれた町を舞台にしている。

 この町で一戸建てに暮らすひと組の中年夫婦が居る。夫リチャードはその台詞からもわかるように研究所に勤める四十三歳のサラリーマン、妻ジェニーはリチャードより何歳か年下の設定の専業主婦である。アメリカで郊外の町に一戸建てを持つということは多くの人が抱く夢(つまりは適わぬ夢)である。ジェニーとリチャードはその夢を、四万ドルの一戸建ての家を手に入れた白人の成功した夫婦であり、けして貧しいとは言えない中流階級なのだ。これはこのお芝居を観る上で頭に入れておくべきことである。

 『庭園のすべて』は、その大切な家の中で演じられる。芝居は下手の階段から下りてきたジェニーが、ゴミ箱に捨ててあったタバコの空き箱を見つけて拾うところから始まる。空き箱を確認し、クーポン券を取らずに捨ててあることを見つけて夫を強くなじるジェニー、大きな声になるのは庭で芝刈りをしているリチャードに届くようにだ。

 「リチャード、ねえ、リチャードったら、何度言ったらわかるの!?」

 この場面のインパクトは強い、ここでこの芝居全体のトーンが決まると言ってもよいほどだ。ジェニー役の神楽坂恵はかなりハイテンションの演技で、拾った空き箱を床に叩きつける。跳ね返ったタバコの空き箱が観客席まで飛んで来ないかと心配になるほどだ。そして、大声でリチャードを叱咤する。

 ジェニーと夫がタバコのクーポン券でもめる場面で、ジェニーがクーポン券をせっせと集めている理由はどうも掃除機が欲しいためらしい。これは夫リチャードの台詞からわかる。

 実は原作であるクーパー版(イギリス版)でのジェニーは、クーポン券ではなくタバコの銀紙(アルミ箔)を集めている。銀紙を丸めてボールにして、それが段々大きくなってくるのを楽しんでいる。ジェニーの夫(クーパー版ではリチャードではなく「バーナード」という名前になっている)は銀紙ボールがアルバート・ホールくらいの大きさになったらどうするの?と言ってジェニーをからかう。

 オールビーはアメリカ版『庭園のすべて』で、この設定を「クーポン券を集めるために好みでもないタバコを喫っている夫婦」という形に変えて再構成し、ジェニーが経済的に「秘密のアルバイト」をする動機を補強している。余談だが、クーポン券は日本に於いては日米合意による規制緩和以前は普及していなかったが、アメリカでは古い時代からポピュラーな販促法だったようだ。逆に新聞の宅配があまりポピュラーではないアメリカの家庭でも、日曜版だけは契約して配達してもらう家庭があるのは、日曜にはまるで電話帳のようなクーポン券のチラシの束が同じような厚さの新聞に挟まれてくるからで、実際アメリカに暮らす親族宅で見た日曜版の新聞は、ひもでぐるぐると結んであって、どれが読むべき紙面なのかクーポンンなのかわからないほどの分厚さだった(閑話休題)。

 ジェニーとリチャードの夫婦の会話が続き、この夫婦の置かれた立場が観客にもわかってくる。私学の寮にいる15歳の一人息子、郊外の高級住宅地に買った4万ドルの家、社交クラブでの近隣住民とのお付き合い、息子はバイク、夫は電動芝刈り機、自分は温室・・・買いたいものがいっぱいありすぎて、お金がいくらあっても足りない。まさに60年代のアメリカ、WASPの中産階級の贅沢な生活があるのだが、ジェニーとリチャードにとってこの生活は、かなり背伸びしたもののようでもある。

 ジェニーは自分も家計を助けるために働きたいとリチャードを口説く。リチャードは古いタイプの人間らしく、病院の受付(固い仕事の象徴だ)さえもダメだと言う。このあたりの夫婦の会話は神楽坂恵と夫リチャード役の梶原涼晴にとってはこのお芝居に観客を引き込めるかどうかが決まる大切なダイアローグである。ここで観客が乗ってくれば、その後のこの劇に対する反応もほぼ掴める。つまりこの第一場では観客に、男性はリチャードに、女性はジェニーにいかに感情移入させることができるか、が大きなポイントである。

 私は、このお芝居でジェニーが夫リチャードに対して恫喝したり、拗ねたり、怒ったり、呆れたり、不貞腐れたり、そんな様々な感情をぶつけつつ自らの要求を執拗に訴え続ける会話が大好きである。神楽坂恵の人間味溢れる内面がそのまま滲み出ているように思えるからだ。ジェニーが怒るときには神楽坂恵も怒り、ジェニーが笑うときには笑っているのだ。この芝居をしているときには神楽坂恵はそのままジェニーになり切っており、それが観客に伝わってくる。演技の巧拙などは二の次である。感じるか、伝わるか、楽しめるか、好きになれるか!そういうことを抜きにして芝居を観ても面白くないのだ。

 神楽坂恵はこの舞台の上で、自らジェニーの気持ちになりきり、自分がジェニーに感情移入することによってこの演技という名の試練を乗り切る。それは、小手先での器用な芝居を見せる役者達には到底想像できない、全身全霊でぶつかる必死の演技なのである。私は神楽坂恵が舞台の上で熱演する姿を毎回感動を持って観ていた。それがファンというものだと思う。

 さて、愛すべきジェニーとリチャードの夫婦は節約しているようでいて、酒もタバコも大いにやっている。特に酒は種類も多く、かなり贅沢に揃えている様子だ。ここでちょっと気になる点がある。ジェニーとの会話の中から「フランス産のウォッカ」がリチャードのお気に入りらしいことがわかる。おそらく高瀬は有名な「グレイ・グース」を念頭に置いてそう書いたのだろうが、実はこのブランドができたのは冷戦が終了した後の20世紀末であり、今でこそ超高級ウォッカとして有名だが、その歴史は未だ10年余りしかない。「グレイ・グース」以前にフランス産のウォッカで有名なブランドは皆無とも言ってよく、やはりここはリチャードのお気に入りとしてはオールビー版と同じくポーランド産のウォッカ(やはりズブロッカか)にしておくか、せめてロシア産(スミノフでもストリチナヤでも)とでもしておくべきではなかっただろうか。

 ジェニーがリチャードに何か食べるかを聞くと、リチャードが食べ物なんて買えるのか、とジェニーを揶揄する。それに対してジェニーが答える言葉が「やっとこさ」なのだが、これはオールビー版の原文”Barely”(かろうじて、ぎりぎり、等の意味)を鴫原(しぎはら)真一が訳した台詞そのまま使っている。何しろもう三十年近く前の翻訳であり、今となっては陳腐化しているが、神楽坂恵が発すると不思議な味わいがあってとても良い。この芝居ではその他にも鴫原の訳がそのまま使われているところがあり、高瀬が鴫原訳を参考にしたことが明確に伺える。

 この芝居で神楽坂恵が演じるジェニーは、15歳の息子を持つアラフォー世代の中年女性である(オールビーはジェニーを”an attractive woman in late thirties”「魅力的な女性、三十代後半」と記載している)。本来ならばもっと年長の女優が演じるべき役だろうが、この高瀬版『庭園のすべて』は出演者が全員若いため、今の神楽坂恵の年齢でもバランスに欠けることはない。舞台女優としての神楽坂恵はようやく本格的なスタートを切ったばかりでもあり、願わくは、何年か後にもっとジェニー本来の年齢に近づいた神楽坂恵の再演を是非観てみたいと思う。

 その30代後半のジェニーが生きている時代は60年代のアメリカである。ベトナム戦争が泥沼化する一方で、黒人には公民権さえ確立しておらず、ビートルズの影響を受けたヒッピー文化が花開いて反戦運動がたけなわ、そんな時代の転換期なのだ。そしてその潮流は女性解放運動へと向かう。いわゆる「ウーマンリブ」、現代のファミニズム運動へと連なる文化革命である。

 そんな激動の時代に書かれた『庭園のすべて』だが、読み方によってはジェニーを女性解放の象徴とも見なすことができるだろう、それも二重の意味で、つまり「仕事」と「セックス」だ(これは神楽坂恵が主演した『恋の罪』の菊池いずみとも共通する)。但し、原作者のクーパーやオールビーがそういう視点で書いたかどうかは不明である。

 ジェニーとリチャードの夫婦喧嘩も膠着状態になってきた。そろそろこのお芝居のキーマンの一人である「独り者のお金持ち」で我らがジェニーの崇拝者でもある、ジャックが登場する頃である。(つづく)

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いよいよ『庭園のすべて』も千秋楽・・・演劇『庭園のすべて』@MAKOTOシアター銀座

 MAKOTOシアター銀座で上演中の『庭園のすべて』もいよいよ本日が最終日。神楽坂恵さんのジェニーに会えなくなるのは、本当に寂しいのですが、まずは無事に終わってよかったと思いました。

 カーテンコールでは神楽坂さんに花束を渡せたので、満足でした。実は中央の最前列に座っていたのですが、開演前に混んできたので(立ち見ができないので通路に座らせることになったらしい)、プロデューサーがやってきてお前は体がでかいから邪魔なのでどいてくれ、と言われたのですが、当然どきませんでした。

 終わってから聞くと、神楽坂恵さんは今日が一番テンションあげたとのことでした。確かにものすごい力が入っていたのがわかりました。神楽坂さんは目に涙をためていましたね。主役を務めあげた安堵と感激の涙なのでしょう。今日も某監督が来ていて、そちらに急ごうとする神楽坂さんを強引に止めて、『しんしんしん』の写真を見せました。「これは出ている、いつ公開?私まだ観ていない」、とのことでした。

 まあ、とにかく、神楽坂恵さんのファン活動ができて良かったです。

 Everything in the garden is lovely!

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2011.07.02

『庭園のすべて』マチネーを観る・・・演劇『庭園のすべて』@MAKOTOシアター銀座

 MAKOTOシアター銀座で上演中の『庭園のすべて』は、残すところ今日を入れてあと二日です。神楽坂恵さんの熱演が生で観られる貴重な機会。今日はマチネーです。

 『庭園のすべて』のセリフがかなり頭に入ってしまったけど、お気に入りはやはりロジャー。

 「何か要りますかっっ!」
 ロジャーって健気ですね。好きだな。

 それから、 トゥース夫人。

 「草が茂るわ、土地が肥えてるから」
 この人がすべての元凶。そしてまた救いの主。まるでデウス・エキス・マキナみたいな存在ですね。

 そして、やはり主役のリチャードのセリフにはいいものがあります。

 「男はな、こんな時には女を殺すもんなんだよ!」
 このお芝居でリチャードに感情移入してしまうと、かなり辛いですね。

110702_img_0874_500 お芝居を観終わった若い女性の二人連れが、「旦那さんがかわいそう…」「そう?、そんなコトないよ」と意見が別れていました。これは男でも意見が別れること必至だろうと思います。

 今日のマチネーは神楽坂さん少し抑え気味。リチャードの梶原さんは喉が辛そうでした。某監督が神楽坂さんを観に来ていました。出てきた神楽坂さんに『しんしんしん』って出てますよね?って聞いたら、いや出ていないと言ってました。『姦C』のこと?と言われたので、いえ違いますと。もう一度。もう一度確認しなければ。明日は夜の千秋楽を観ます!

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2011.07.01

『庭園のすべて』Bプログラムはコメディ?!・・・演劇『庭園のすべて』@MAKOTOシアター銀座

110701_img_0871_500 MAKOTOシアター銀座で上演中の『庭園のすべて』三日目にして初めてBプロを観ました。主演は大塚麻恵さん&梶原さん。また違った面白さで、どちらかと言えばコメディタッチなのには驚き。オフブロードウェーの雰囲気という感じでしょうか。大塚さんは泣かないジェニー、むしろ怒ってあきれるジェニーを演じていました。これは両方のプログラムを観てよかったと思います。

 神楽坂さんは、Aプロで大塚さんが演じる役シンシアで出ています。セリフは少ないのですが、余裕しゃくしゃくの様子で楽しそうに演じており、また違ったセレブな奥様という感じを出していました。さすがです。神楽坂さんは今日は上手での演技が多いと思ったので、席は上手壁際にしました。

 
 幕が下りてからMAKOTOシアター前の路上で神楽坂さんと少しお話しができました。初めて名乗ってお話ができました(テアトル新宿で握手してもらったことはある)が、一幕一場と同様に髪を止めた神楽坂さんはとてもキュートで、お話も楽しい方でした。ますますファンになりました。神楽坂さんからは、昨日はシリアスで、今日はコメディだったでしょ、毎日違って面白いでしょ、と言われました。確かにその通りですね。明日はマチネーを観ます。

 
 『庭園のすべて』でお気に入りの台詞をひとつ。ロジャーがリチャードに問い詰められて言います。

「教育の義務だろ、勤労の義務だろ、…それから、…節電の義務だっ!」
ボカッ!

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2011.06.30

今日も『庭園のすべて』がすべて・・・演劇『庭園のすべて』@MAKOTOシアター銀座

110630_img_0868_500 今日も京橋で『庭園のすべて』Aプログラムを鑑賞。二回目なので、今度は下手の階段(楽屋へ続く)がよく見えるところに座って観ました。昨日よりも主演のお二人は活舌もよく、お芝居もテンポよく進みました。セリフは少し昨日から変わっていますね。演出家が臨機応変に変えているのでしょうか?例えばロジャーのセリフで初日は「みんながキング牧師みたいにならないと」というのがありますが、これが今日は「みんながマザー・テレサみたいにならないと」となっていました。

 明らかに昨日と違ったリラックスした舞台でしたが、しかし、どうしたんでしょう?!昨日は笑いも出ていたのに、今日のお客さん達は固唾を呑んで舞台を見つめているではありませんか!?ノワールだと思って引いたんでしょうかね?

 でも、神楽坂さんは本当に本当に舞台の上で輝いていました。大金が手に入ったはいいけど、どうしてよいかわからない、でもリチャードには認めてもらいたいというそんなけなげだけど欲深いジェニーの複雑な切実な心境をよく表わすお芝居でした。

 考えてみるに、映画『恋の罪』と演劇『庭園のすべて』の共通点はprostitutionなわけですが、その動機が180度違うのが面白いですね。どちらも(きっと)ブラックコメディという点も共通点ではあるでしょうが。
そんなわけで、『庭園のすべて』のジェニーが『恋の罪』の菊池いずみと、トゥース夫人が尾沢美津子とダブって見えてしまうのは自分だけ?いや、米倉紀乃子(きしこ)さんって、冨樫真さんに似てるしf^_^;)キャスティングも狙ってる、絶対に!いや、それどころか企画さえも?

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2011.06.29

神楽坂さんの熱演(涙も)が見られた初日・・・演劇『庭園のすべて』@MAKOTOシアター銀座

Y_m 京橋のMAKOTOシアター銀座で、神楽坂恵さん主演の舞台劇『庭園のすべて』を観て来ました。
月の石経由でチケット買ったら、特典に神楽坂さんコメントDVDがもらえました。しかもサイン入りでした。しかも5日連続で行くので5枚も!(内一枚はBプログラム主演の大塚麻恵さん仕様)お芝居はと言うと、神楽坂さん熱演でした。ある意味、『恋の罪』の予習にピッタリかな(^_^;)

 明日も見に行こう!でも、さすがに最前列はやめておこうかな(今日は上手側の「ちゃんとした椅子」列最前列通路側という特等席だった)。

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